創業者が明かした なぜリッツ・カールトンは「世界一」になれたか(気になるビジネス本)

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お客の満足のため従業員に2000ドル使う権限

   シュルツ氏は従業員に、顧客サービスに努めろと指示だけを繰り返しているのではもちろんない。さまざまなユニークな施策が紹介されている。一部は社内で問題視もされたといい、最も反発が大きかった一つは、2000ドルを上限に自由に決済OKというもの。「総支配人から新米のバスボーイまで、すべてのホテル従業員は、お客様に満足していただくためであれば最大2000ドルまで自由に使ってよい」と決めたのだ。「同僚たちはほとんど卒倒しそうに」なり、チェーンの各ホテルオーナーたちはシュルツ氏を訴える動きさえみせたという。

   顧客の苦情を受けた従業員らの答えは、問題が大きいほど「では、上司と相談してみます」というものになりがち。ホテルに限らずビジネスの世界でも「上司と相談」対応が横行しているとシュルツ氏はいう。ホテルはそれではいけない。顧客は苦情を述べ、その場で解決されることを望んでいる。「靴下がない」と声をあげた子どもに対して母親は解決法を知っている。ホテルは、その母親役を務めなければならないとシュルツ氏は考えた。その振る舞いができるための2000ドルだ。

   チェーンのビーチリゾートホテルで新婚カップルの新郎がビーチで、結婚指輪を紛失した。落ち込むカップルを見かねた従業員らも探すのを手伝うが見つからない。夜になって4人の従業員が相談し、例の2000ドルの一部を使って金属探知機4台を購入。翌朝までに指輪を見つけて2人の朝食のテーブルに置いておいた。しばらくして、喜びにあふれた歓声があがったという。「探知機購入を上司に求めていたら、たぶん1台しか許可されなかった」とシュルツ氏。「4人は、自分たちにそれをする権限があると知っていた。じつに正しい選択をしたというほかない」。このことはメディアでも取り上げられ、「とてつもなくありがたいパブリシティーになった」ものだ。

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