「個人間融資」という言葉を知っているだろうか。SNSやインターネット掲示板などを通じて、見知らぬ人同士が金銭を貸し借りする行為だ。
とんでもない高金利を要求されたり、個人情報や保証金をだまし取られたりする被害が後を絶たないため、国民生活センターは「個人間融資には絶対に手を出さないで」と警告した。2019年6月14日の発表。
村役場の職員が女性にカネとともに要求したのは......
J-CASTニュース会社ウォッチ編集部の取材に応じた国民生活センター相談情報部の飯田周作さんによると、個人間融資の相談件数は、2017年度までは年間数件~10件程度だったが、2018年度は少なくとも20件以上と、急に増えている。ヤミ金融に対する対策が強化されたため、悪質なヤミ金業者がSNSの世界に活路を見出し、主に20~30代の若者が狙われているという。
飯田さんは、
「今年度に入っても、6月に大阪府千早赤坂村役場の職員がネット掲示板を通じて、女性たちに性行為を条件に法定金利の7倍以上の利息で貸し付け、出資法違反(超高金利)で逮捕される事件がありました。相談内容の大半が刑事事件に発展しかねないケースが多いのが特徴です」
と語る。
たとえば、こんなケースだ。
【事例1】個人間融資を通じお金を借りたが、法外な利息を要求された
生活費に困り、他から借入れができないので、個人間融資の掲示板サイトに「お金を貸してほしい」と書き込んだ。返事をしてきた人と直接会って計15万円を借りた。これまでに50万円以上返済したのに、さらに400万円を支払うよう連絡がきた。相手は自分の住所を知っている。どうしたらよいか。(2018年7月、50歳代男性)
飯田さんはこう指摘する。
「利息制限法では、借入元本に対して年利15~20%までが上限になっています。融資をなりわい(業務)にしない兄弟や友人間などの個人融資でも、年利109.5%が上限です。15万円だと利息は、なりわいなら年に2万7000円まで、友人間融資としても16万4000円までだから、とんでもない高利です。明らかに違法ですから警察に相談すべき事案です」
暴利と個人情報の二兎を追うヤミ金業者
【事例2】融資をやめたいと伝えたのに、一方的に返済を求められた
SNSの「個人で融資します」という書き込みを見て相手に連絡を取り、60万円の融資を申し込んだ。相手から「まず2万円を銀行口座に振り込む。それをそのままこちらへ振り込んで返してほしい。そこで審査をする」と言われ、銀行口座などの個人情報を伝えてしまった。心配になり、やめたいと伝えると、「すでに1万円を振り込んだ。1週間後に3万円を返すように」と言われた。(2018年7月、20歳代男性)
このケースを飯田さんはこう説明する。
「問題点が2つあります。一つはヤミ金融特有の『押し貸し』という手法です。少額でも口座に振り込んで一方的に貸し付けて、あとから高利を要求する手口です。もう1つは個人情報を入手し、それを脅しの材料にしたり、転売したりする危険性です。個人情報自体が闇の世界では売買の対象になっています。個人間融資では、審査に必要だとして、免許証やパスポートを写メで送らせたり、携帯電話番号や銀行口座を連絡させたりします。何に悪用されるかわかりませんから、絶対に教えてはいけません」
【事例3】融資の保証金を支払ったとたん、連絡が取れなくなった
携帯電話料金の滞納などでお金を借りられるところがなく、SNSで融資を募った。融資する人が現れたので、SNSでやり取りをして100万円を借りることにした。保証金として20万円の融資に対して1万円が必要と言われ、5万円を支払った。その後、相手と連絡がつかなくなった。(2019年2月、20歳代女性)
飯田さんが語る。
「これは典型的な『融資保証金詐欺』です。先に保証金や手数料を振り込ませた後、行方をくらませるもので、一種の振り込め詐欺とも言えるでしょう。SNSの個人間融資は詐欺師の巣窟と思って間違いありません。相手の正体を確かめようがありませんから、最初から信用してはいけません」
個人間融資に走る前に多重債務状態を解決しよう
【事例4】利息免除の条件に裸の写真を送ったのに融資を受けられない
個人間融資のサイトを利用し、15万円の融資を依頼した。「毎月の返済額は1万5000円がぎりぎりだ」と相手に伝えると、「それだと利息がついて総額100万円を超す返済額になる。写真を送れば、利息を免除する」というので、要求されるままに下着姿や裸の写真を送った。しかし融資は受けられず、連絡にも返事がこなくなった。(2019年2月、30歳代女性)
飯田さんが指摘する。
「女性に被害が多いケースです。今後、融資の条件として性的な要求をされる心配があります。また、裸の写真や動画をアダルトサイトなどに転売されたり、借金の返済を滞納すると、写真をインターネット上に流すという脅しの材料に使われたりする恐れもあります」
こうしたことから飯田さんは、
「個人間融資を受けるのは、危険で絶対に手を出してはいけません。仮に一時的に借入れができたとしても、法外な利息を求められるケースがほとんどです。もし、多重債務などで金融機関から借りられずに困っているのなら、自治体の相談窓口や最寄りの消費生活センターに相談しましょう。弁護士会で無料の法律相談を行っているところもあるので、まずはそれらの窓口に相談して、多重債務の状態を解決することが先決です」
と強調している。
(福田和郎)