国の統計の定義ではパート勤務も「共働き」だが......
J-CASTニュース会社ウォッチ編集部では、女性の働き方に詳しい、主婦に特化した就労支援サービスを展開するビースタイルの調査機関「しゅふJOB総研」の川上敬太郎所長に、「パートは共働きじゃない」論争の意見を求めた。
――今回の投稿騒ぎを読み、率直にどのような感想を持ちましたか?
川上さん「確かに、人によって受け取り方がかなり変わってしまうテーマだろうな、と思いました。単純に、いま働いているかいないかだけで判断するなら、労働条件にかかわらず働いていれば『共働き』と表現していいと思います。総務省などの国の統計では、『共働き世帯』の定義は『(自営業・農林水産業を除く)夫婦とも働いている雇用労働者』となっており、パート勤務もカウントしています。
しかし、実際にはさまざまな働き方があるので、『共働き』というくくりで同じに見られることに対して抵抗感を持つ人が一定数存在するのもわかる気がします。『パート勤務を共働きというのはおこがましい』とする人の多くは、勤務条件や収入などの観点から、正社員同士の夫婦対等に働いている状態を『共働き』とイメージしているのでしょう。また、『扶養に入っていれば共働きとは言えない』という意見も、ただ働いているだけで同じ『共働き』という言葉で括られることに対する違和感という点では、同じですね」
――今回の論争の背景には、正社員VS.パートという「働くママ間の格差問題」があるような気がします。ほかの女性サイトでも、「私は週5日のパートの看護師です。正社員のママ友から『看護師さんだったの。ごめんね~、そこいらの内職パートと一緒にしちゃって~』と言われて腹がたった」とか、「運動会でお重に入れたお弁当を広げていると、隣のママから『パートじゃないと、そこまでできないのよね~。フルタイムで残業ありのウチなんか無理だわ』と言われて悔しかった」といったコメントがあふれています。
川上さん「パート勤務は気楽だ、という決めつけに代表される認識ギャップは、至る所で見られます。実際にはパート勤務なりの大変さがあります。一方で、正社員でフルタイム勤務していても、いい加減な仕事ぶりの人が少なくありませんし、パート勤務でありながら生産性高く仕事をこなし、フルタイム社員以上の成果を出している人も多くいます。
そのような内実を把握せず、フルタイムかパートか、正規か非正規か、といった表面的な分類だけで、その人の頑張り度合いや大変さを評価しても意味がありません。それよりも、人それぞれの立場や選択を尊重することのほうが大切ではないかと考えます」
――共働き世帯が増えていますが、夫婦の働き方はこれからどう変わっていくのでしょうか。
川上さん「私たちは、2017年に働く女性を対象に『10年後に増えそうな夫婦の働き方は何か』を聞いて調査しました。その際、共働きのあり方を3つに分けました。1つは『夫が中心となって働き、妻は補助的に働く』パターン。今回の投稿者は、このパターンではないでしょうか。もう1つはその逆で、『妻が中心となって働き、夫は補助的に働く』パターン。そして3つ目が『夫婦対等に共働き』するパターンです。調査では74%の人が『夫婦対等に共働き』が増えると回答しました。『夫が中心、妻は補助的』という人は25%しかいませんでした。
4年前の同じ調査に比べ、『働く女性の未来は明るい』と答えた人が多いのが特徴です。フリーコメントを見ると、『女性のほうが変化に強い。男性より立場が上になる日が近い』『夫の家事分担の理解が社会的に浸透し、仕事がしやすくなるだろう』『共働きが当たり前になり、働くことに誇りを持つ女性が増えて、自分自身に価値を見いだすようになる』などと、『夫婦対等に共働き』に期待する人がとても多かったのです」