「なんか、だるい」「朝がつらい」「会社に行きたくない」......。お天気もジメジメ、ムシムシ。雨雲が立ち込めるように、なんだかどよ~んとしていて、気持ちも沈みがち。ちまたでは「6月病」といわれている問題がチラホラ。働く側は、「行きたいけど身体が言うことをきかないから、どうしようもない」と考え、会社側としては、「病気ではないかもしれないのに、会社を休むというのはいかがなものか」と考えます。
立ち場が変われば、これは当然のこと。しかし、6月病を理由に会社を休むことで、働く人が不利益を被ることがあるの、ないの? 今回はこちらのご相談を、グラディアトル法律事務所の闘う弁護士、北川雄士先生に聞きました。
6月病で休んで、評価や給与が下がるのは仕方ないの?
まず、「5月病や6月病」というのは、正式な病名ではなく、新入社員や春の人事異動など環境変化があった方が、新しい環境への適応がうまくいかず、なんとなく体調が悪い、やる気が出ないなど心身に不調があらわれる状況を指します。医学的には「適応障害」「抑うつ状態」などの病気と関係があるとされることが多いものです。
一方、「欠勤」とは、勤めを休むこと、出勤すべき日に出勤しないことを意味し、法律上は欠勤理由についてきまりはありません。すなわち、「5月病や6月病」を理由に、欠勤すること自体には、問題はないといえます。ただし、一方で「欠勤」は就労していないことになるので、基本的には有給休暇扱いにはなりません。その分の賃金は、カットされるのが原則となります。 なお法律上、強制労働は禁止されていますので(労働基準法5条)、会社側が出社を強制することはできません。
「評価」、いわゆる人事考課制度は、従業員の業務遂行成績や能力、勤務態度などを評価・査定することで、給与・人事などの処遇の資料とする制度のことを言います。
しかし、その前提となる査定行為は、制度の枠内で使用者(会社側)の裁量的判断に委ねられるとされています。もっとも、人事考課制度に基づき従業員の賃金を改定するには、その制度を就業規則に定めたうえで従業員に周知しなければいけません。
特に降級(賃金を下げる)の場合には、具体的事実による根拠に基づき、本人の能力と業績が期待されるものと比べ、著しく劣っていると判断できる必要があるとされています。
そのため、評価が下げられることについては、人事考課制度に従ったものであれば、仕方がないといえるでしょう。
ただし、「給与を下げる」ことは人事考課制度を就業規則で周知し、その内容に従ったうえで、欠勤により、能力と業績が期待されるものと比べ、著しく劣っていると判断できてはじめて可能となります。よって、このような判断ができないままに、給与が下げられたとしたら不当なものになるでしょう。
つまり、欠勤扱いで、その分の給与をカットされることは問題ありませんが、有給休暇扱いなのに給与をカットされたとしたら、問題ありです。会社側にどのような根拠で評価され、賃金がカットされたのか、判断の経緯を聞いておくべきです。そのうえで違法性があるかどうか、相談することをオススメします。