出勤自由、休みも自由
リモートワークは、ITの使い方次第で幅広い業種で採用できそうだが、従業員が好きな日に出社し、好きな時間だけ、好みの仕事で働く―というような働き方はどうだろうか。テクノロジーを扱う最先端企業ではなく、大阪・茨木の海産物加工会社で導入し成功を収めているという。
輸入した天然エビを扱うパプアニューギニア海産。加工作業を担当する16人のパート従業員は、自分の都合などに応じて仕事をすればよく、休むときも会社への連絡は不要、長期休暇は何日とっても問題ない。しかも、嫌いな作業はしなくてもよいきまりだ。
同社はもともと宮城・石巻に工場があったが2011年の東日本大震災で被災。縁あって大阪に移転した。しかしパート集めに苦労し、いろいろ考えたすえに13年からこの「フリースケジュール」を取り入れた。最初からうまくいったわけではないが、主婦のパートタイムワークのニーズとうまくかみあい、機能するようになった。
自由な勤務は、子どもの病気など突発的なことや家庭の事情が生じた場合に休みやすく主婦にとっては願ってもない好条件。できれば長く勤務したいと考えるから、仕事には誠実に取り組む。だから、時給は高水準とはいえないものの、離職率は低下。それにつれてベテランが増え、個々の習熟度が増して、それぞれが得意な作業を選んで取り組むので生産性もアップした。「フリースケジュール」を導入して、2017年までの4年間で人件費は約30%減ったという。
現代ではグローバル化のなか、いわゆるダイバーシティを重視して、外国人の採用に積極的な企業が少なくない。増える外国人従業員との会社ライフも「働き方」に大きなかかわりを持つことになろう。本書では「外国人材と共に」というセクションを設け、外国人の採用に積極的な企業を数々紹介。なかには「新卒50人のうち44人が外国籍」というIT系の会社もあった。
そのセクションの最後で、これらの企業で働く外国人従業員が、日本企業のグローバル化、ダイバーシティをどう評価しているのかを述べる座談会を収録。座談会には欧米とアジア出身の5人が参加した。彼らが口をそろえて指摘したのは「勤務時間が長すぎる」とか「英語が話せる人が少ない」など、グローバル化にはまだ距離がある現状。こちらはまだ「スゴい働き方」への途上だった。
来年以降も続く「働き方改革」。本書は個人にとっても会社でマネジメントを担当する人にとっても参考になる一冊に違いない。
「あの会社のスゴい働き方」
日経産業新聞編
日本経済新聞出版社
税別700円