人の五感に訴えるノンバーバル・コミュニケーション
もちろん、この新しい店長の接客そのものが問題ありなのですが、私はその観点とは別にひとつの話を思い出しました。
人間は、言葉だけで成り立っているわけではなく、五感のすべてで「関係を感じ取りながら」生き、言語(バーバル)と非言語(ノンバーバル)の両方でコミュニケーションを交わしている、という大学の心理学で学んだ知識です。
さらに、このノンバーバル・コミュニケーションは、人間関係形成においてはバーバル・コミュニケーションよりも相手に与える影響が大きく、それは視線、顔の表情、各部位の動きをはじめ、からだ全体から発せられ、意識しているかいないにかかわらず、人と人は向き合うだけで五感に訴えかけるものがあるといわれています。
ノンバーバル・コミュニケーションをベースとして、次に繰り出されるバーバル・コミュニケーションはより大きく影響を受けます。すなわち、ノンバーバル・コミュニケーションによってつくられた印象によって、バーバル・コミュニケーションとしての発言がどのような印象で相手に受け取られるかが決まってしまうというのです。
噛み砕いて言うと、言葉ではない行動、仕草、態度、目線、表情などが、その後に発せられた言葉の印象を左右してしまい発言受け入れ側の態度に大きな影響を及ぼすわけなのです。
先の新店長の仕草や表情や態度から、我々3人に伝わった最初の印象こそ、まさにノンバーバル・コミュニケーションなのです。3人が共通して感じた、ビジネスライクでどこか温かみを感じさせない彼の雰囲気が、その後を支配することになるわけです。
バーバル・コミュニケーションである追加注文の際の物言いも、最初のノンバーバル・コミュニケーションがなかったなら、あるいは少しでも温かみを感じさせていたなら、我々が受ける印象は違っていたと思いますし、実際にはさほど待たされることなく料理も出ても来たので、少なくとも「この店に来るのはしばらくやめようか」という話にはならなかったハズなのです。
ノンバーバル・コミュニケーションの大切さを、改めて痛感させられます。