年寄りほどオトクな年金制度 将来がないものに、そりゃあ若者は納めない(小田切尚登)

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豊かな暮らしの高齢者

   今の高齢者には比較的豊かな人が多い。世帯主が60歳以上の世帯の貯蓄額の平均は2284万円、中央値が1515万円である(家計調査報告2018による)。つまり、必要があれば自分で1500万円くらい何とかなるというような高齢者が多いということだ。

   加えて、75歳以上の後期高齢者の医療費一割負担などの優遇政策もあり、むしろ高齢者優遇ではないか、との批判の声が強い。一方で貯蓄が100万円以下の高齢者世帯が8.3%あるが、この解決を年金に求めるのは筋違いだろう。

   いずれにせよ、20歳から60歳までの40年間働いて年金保険料を納めれば、60歳から100歳までの40年間は一切働かなくとも豊かな人生が送れる、などと考えている人はいないだろうし、そんなことは不可能である。しかし、今の日本では手厚い年金制度によって現実的に高齢者の多くが豊かな生活が送れているというのもまた事実である。

   今の最大の問題は、若い人が年金受給世代になったときどうなるのか、ということにある。老人に手厚い年金を支払っているので、若い人が年金受給世代になったときに払う原資がどんどん減っている。しかも今は少子高齢化が進んでいて、年金を支払う負担が加速度的に重くなっている。厳しい状況だ。

   年金制度は「国家100年の計」であり、国民が世代を超えて納得できるような制度を作り上げる必要がある。

   与野党がパフォーマンス競争に明け暮れるのではなく、じっくりと超党派で議論をして良い政策を作り上げてもらいたいものだ。(小田切尚登)

小田切 尚登(おだぎり・なおと)
小田切 尚登(おだぎり・なおと)
経済アナリスト
東京大学法学部卒業。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバなど大手外資系金融機関4社で勤務した後に独立。現在、明治大学大学院兼任講師(担当は金融論とコミュニケーション)。ハーン銀行(モンゴル)独立取締役。経済誌に定期的に寄稿するほか、CNBCやBloombergTVなどの海外メディアへの出演も多数。音楽スペースのシンフォニー・サロン(門前仲町)を主宰し、ピアニストとしても活躍する。1957年生まれ。
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