年寄りほどオトクな年金制度 将来がないものに、そりゃあ若者は納めない(小田切尚登)

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年金制度が「存続」できる理由がある

   それほどまで年金受給者に有利な制度が存続していられるのはなぜか――。理由は大きく三つある。

   まず、賦課方式が採用されていること。これは手元の資金の出入りを年ごとに管理するやり方だ。いわば「どんぶり勘定」であり、長期的な展望に欠けている。年金資金は現役世代が払う保険料を右から左に回していけばいいので、将来のことはいざ知らず、当座の資金繰りの問題はない。

   二つ目は、税金が流用されていること。税金も年金保険料も国民の懐から出ているカネ、ということでは同じだ。しかし、税金は高所得者の負担が大きく、年収1000万円以上の高額所得者が所得税の約半分を負担している。

   つまり税金の投入により、高所得者から低所得者への再配分がなされているということだ(ちなみに英米では税金を年金に流用するということはない)。

   国民年金については、給付の半分が税金から払われている。厚生年金の給付についても二割程度が税金からの資金からきている。これは全体として、年金の原資の半分以上は国と企業から来ているということだ。

   年金の本来の趣旨、すなわち個々人が長年積み立てていって退職後に備える、というのとは程遠い状況になっている。

   三つ目は、運用の成果。2001年度から年金の運用を請け負っているのが、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)である。GPIFでは国内外の債券と株式にバランスよく運用してきた。2018年第3四半期末時点で運用残高は150兆6630億円で、2001年度からの累計で56兆7000万円増えており、収益率は年率2.73%である。

   リーマンショックがあったりして短期的に下がる局面もあるが、長期的にこれだけ増えているのはまずまずだ。国内ではゼロ金利と株価の伸び悩んでいる中で、海外にも積極的に資金を振り向けていることが功を奏した。

小田切 尚登(おだぎり・なおと)
小田切 尚登(おだぎり・なおと)
経済アナリスト
東京大学法学部卒業。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバなど大手外資系金融機関4社で勤務した後に独立。現在、明治大学大学院兼任講師(担当は金融論とコミュニケーション)。ハーン銀行(モンゴル)独立取締役。経済誌に定期的に寄稿するほか、CNBCやBloombergTVなどの海外メディアへの出演も多数。音楽スペースのシンフォニー・サロン(門前仲町)を主宰し、ピアニストとしても活躍する。1957年生まれ。
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