ハードル高い海外市場
中国でキャッシュレス化が急速に進んだのは、プラットフォーマー側が、普及の最初の段階であるネットショッピングなどで、業者と消費者を単に媒介するだけではなく、消費者には品物をきちんと届くことを、業者には支払いがちゃんと行われるよう保証して信用を築くことに成功したことが大きいという。一方で、銀行での手続きは待たされることが多く、金融機関が近くにないという人たちも少なくないため、スマホ決済がもてはやされるようになった。
中国で進められているキャッシュレス化は、日本でそれを推進しようとするのとは異なり、国内の「新経済」のため。利用するためには「住民」であることの証明や、中国国内に銀行口座を持っていることが求められる。外国からの訪問客らへの配慮はほとんどない。しかし、中国国内に巨大市場があるからとはいえ、いずれ限界に達するのだから、国内の外国人向け、海外向け市場の開拓は避けらないと著者はみている。
しかし今、米国との貿易戦争で、中国「新経済」の国際化が滞る格好になってしまった。
「キャッシュレス国家 『中国新経済』の光と影」
西村友作著
文藝春秋
税別850円