「老後2000万円不足」は見通し甘い! 子どもに教える「本当はもっとシビア」(気になるビジネス本)

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   キャッシュレス社会を目指す動きが活発化している。近い将来、お金をめぐって大きな変化が訪れそうだ。

   その実現にはグローバル化の影響も大きい。「親子で学ぶ お金と経済の図鑑」(技術評論社)は、子どもたちがお金に対する理解を深め、世界経済について学べるようさまざまなことを、わかりやすく解説したエンサイクロペディア的ムック。おとなにとっては学び直しのテキストになり、夏休みに親子で親しむのに最適な一冊。

「親子で学ぶ お金と経済の図鑑」(子どものための「お金と経済」プロジェクト著)技術評論社
  • キャッシュレス化が進めばお金をめぐる事情が変わる…
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最先端の仮想通貨もしっかり

   オールカラーで、漢字にはすべてルビがふられている。統計の紹介にはグラフを多用し、解説では動物のキャラクターを使ったマンガやグラフィックスを使って理解を助ける編集になっている。「図鑑」と名付けられた所以だろう。

   本書は「まなびのずかん」シリーズの最新刊。これまで「小学理科」や「天文学」「自動車解剖マニュアル」や、プログラミングの学習用言語「スクラッチ」をテーマにしたものなのでラインアップを重ねている。

   第1章「お金のはなし」では、物々交換から、貨幣や紙幣の登場に及び、だれがお金を発行し、どうして使えるのかを説明。キャッシュカード、クレジットカードにも言及し、最先端の仮想通貨についての解説も手厚い。国際的な決済での有利さや、投機性があること、安全面では完ぺきでないことなどがマンガで語られる。

「預金と貯金の違い」知ってる?

   第2章「私たちの生活と経済のはなし」では、銀行などの金融機関の役割や保険の仕組みから消費者金融、カードローンの実情にも踏み込む。日本銀行についても見開きで説明。子どもたちには市中銀行との違いが、これでよくわかるのではなかろうか。「投資・出資・融資の違い」「預金と貯金の違い」や「利子と利息の仕組み」などの項は、おとなにとっても認識をあらたにするパートかもしれない。

   この章ではまた、「貧困の問題」や「生涯賃金と老後に必要な資金」「日本で暮らすには、いくらかかるのか」など、近年、社会問題化しているテーマにも挑む。「生活保護を受けている人がこの20年間で2倍以上に増えている」として、貧困を「社会全体として取り組むべき問題」と提起している。

   「老後に必要な資金」をめぐっては、金融庁が先ごろ発表した「夫婦そろって65歳から30年間生きると、老後資金が総額で2000万円不足する」とする試算をきっかけにした騒動が続いている。本書では老後の資金について「定説」を紹介。それによると「65歳から90歳までの25年間で考えたときに不足するお金は3000万円」で、金融庁の資産よりシビア。

   第3章は「企業活動と経済のはなし」、第4章「国や地方自治体のお金のはなし」、第5章「世界経済のはなし」と続く。

   「世界経済のはなし」では「外国為替」「貿易と関税の仕組み」や、かつて日米間で深刻化した例を題材に貿易摩擦を説明。いま世界が注目している米中貿易摩擦を理解するうえで大いに参考になる。

「親子で学ぶ お金と経済の図鑑」
子どものための「お金と経済」プロジェクト著
技術評論社
税別2780円

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