日本の高齢者は世界一の働き者
永濱さんが説明する。
「わが国では、働いている60代後半の男女が世界的にも非常に多いのです。労働政策研究・研修機構が作ったデータによると、労働力率が2018年時点で男性が55%、女性が34%に達しています。ともに世界トップで、2位の米国でも男性が30%台後半、女性が20%台後半ですから、格段に高い水準です。そこで、65歳以上の無職世帯ではなく、勤労世帯の収支をみると、実支出が月34万円弱なのに対し、実収入が月約42万円と、月平均8万円以上の黒字となっているのです」
このため、仮に世帯主が65~69歳まで働いたとすると、今後も収支が不変であれば、70歳以降も53.4年の生活持続が可能という計算になるそうだ=下図参照。「70歳+53歳=123歳まで大丈夫!」ということになる。
永濱さんが語る。
「だから政府が70歳までの雇用延長を進めようとしているのです。『老後に2000万円の資金が必要なのか』と内向きに落ち込まずに、どんどん働き続けることを考えるべきでしょう」
ただ、問題点も残っている。高齢者世帯の貯蓄額の中央値は1515万円だが、一方で、300万円未満の世帯が全体の15.9%を占めていることだ。人生100年時代に十分な貯蓄を持っていないシニア世帯が存在することも事実なのだ。
永濱さんは最後にこう強調した。
「今回の試算結果も現在の家計調査を前提としたもので、相当幅を持ってみる必要があります。低金利で預貯金ではお金が増えないなか、老後の資産の運用を進めていく必要があることは間違っていません。日本ではお金儲けは悪であるという意識が高く、義務教育では何の授業もありませんが、米国では小学校から投資教育を取り入れています。若い世代は今のシニア以上に厳しくなりますから、老後に備えてこつこつ運用を考えていくべきだと思います」
(福田和郎)