その89「立ち入り禁止」の芝生「こんなものいらない!?」(岩城元)

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   東京・日比谷公園。都心にある代表的な公園である。皇居、国会議事堂や霞ヶ関の中央官庁街、そして銀座の繁華街にも近く、緑に包まれている。僕も都心に出かけた折には、よく散歩する。

   ところが、気にいらない点がひとつある。園内には「第一花壇」「第二花壇」と称して芝生の広場があるのだけど、どちらにも「芝生に入らないで下さい 東京都」という表示がある。

  • 溝まで設けて立ち入りを拒絶する芝生(東京・日比谷公園)
    溝まで設けて立ち入りを拒絶する芝生(東京・日比谷公園)
  • 溝まで設けて立ち入りを拒絶する芝生(東京・日比谷公園)

芝生は「香りを楽しむ」ものだった

   好天の日、「芝生の上で寝ころびたいなあ」と思っても、無理である。芝生の手前には溝のようなものもあり、無理に入ろうとすれば、怪我をしかねない。芝生を眺めるだけで満足するしかない。

   ここを出て北に歩くと、日比谷公園とは比べものにならないほど広い皇居前広場(皇居外苑)に入っていく。芝生に松の木が点在している。

   広場を内堀通りが縦貫していて、その東側、丸の内のオフィス街に近いほうの芝生には夜間を除いて立ち入れるが、皇居に近く、東側よりずっと広大な西側の芝生には「立入禁止 環境省 皇居外苑管理事務所」の表示がある。

   でも、芝生って、そもそもはその上に座ったり、寝そべったり、あるいは走ったりして「使う」ものではないのだろうか。

   しかし、日比谷公園や皇居前広場を管理している役所にとっては、そうではないようだ。日比谷公園の芝生の外側には「芝生の中には入れませんが、芝生の香りとさまざまな花の色彩を楽しんで下さい」とある。

   エッ、芝生って、香りを楽しむものなの? それに、芝生の香りって、何メートルも離れていても、漂ってくるのだろうか? 芝生の上に寝そべったりしてこそ、香りもするのではないか。

岩城 元(いわき・はじむ)
岩城 元(いわき・はじむ)
1940年大阪府生まれ。京都大学卒業後、1963年から2000年まで朝日新聞社勤務。主として経済記者。2001年から14年まで中国に滞在。ハルビン理工大学、広西師範大学や、自分でつくった塾で日本語を教える。現在、無職。唯一の肩書は「一般社団法人 健康・長寿国際交流協会 理事」
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