「人間の欲求」を規制するのは難しい
じつは、チケットの高値転売に頭を痛めているのは、日本だけではない。2012年のロンドンオリンピックでも、チケットの高値転売は問題となった。
英国は「ロンドンオリンピック・パラリンピック法」でチケットの転売に規制を課して、大会組織委員会から正式な権限が与えられた場合を除き、チケットの販売などを公共の場所または事業として行うことを禁止、違反者には罰金刑を科した。それでも、水面下でチケットの転売は行われた。
サッカーの2018FIFAワールドカップ(W杯)ロシア大会では、観戦チケットがインターネット上の転売サイトで40倍近い価格で販売され問題となった。
一方、絵画などの美術品は転売されることにより価格が上がり、その評価が高まっていく。チケット転売と美術品のオークションとを一緒にするな、との声が聞こえてきそうだが、転売を一概に「悪」と決めつけるのは難しいことには変わりない。
「入手したいという欲求が、価値を高める」ことにつながっており、人間の欲求を規制するのは難しい。
転売を禁止しても、法の網を潜り抜けて転売が行われる可能性は高い。このため、最初のチケット購入者を登録し、登録者以外は入場できないようにする「電子チケット」などの開発が進められている。転売されたチケットの購入者を締め出すことで、高額のチケット転売を規制しようという狙いだ。
ラグビーワールドカップ、東京五輪・パラリンピックという世界的なイベントを控え、果たして「入場券不正転売禁止法」は有効に機能するのか。それとも、転売する者とそれを阻止しようとする行政のイタチごっこは続くのだろうか。(鷲尾香一)