2000万円どころか7000万円足りない試算も
そもそも「老後の生活費は2000万円でも不足かもしれない」と、さまざまなエコノミストの調査レポートを紹介しているのが朝日新聞だ。
「第一生命研究所の永浜利広氏が(金融庁報告書と)同じ条件で試算すると、必要額が1500万円に減った。一方、2000万円では足りないという試算がある。ニッセイ基礎研究所は、サラリーマンと専業主婦の2人世帯で収入が公的年金のみのケースを想定して試算した。現役時代と同じ生活水準を保とうとすれば、(現役時代の)年収300万円未満の世帯で1800万円、年収750~1000万円未満で3650万円、年収1200万円以上で7700万円など、年収が増えるごとに必要額も大きく膨らんだ」
さまざまな年収や資産の人を分けて分析しないと、本当に必要な老後の資金はわからないというわけだ。
ともあれ、政府与党は報告書を「なかったこと」(自民党・森山裕国会対策委員長)にする構えだ。それと同時に、5年に1度行なわれる公的年金財政検証の公表の先送りを図っている。
公的年金財政検証とは、100年というスパンで保険料収入や年金給付費の見通しなどを分析。長期の公的年金財政の収支バランスを検証して、将来の公的年金の給付水準を示すものだ。だから「公的年金の定期検診」と呼ばれる。今回は6月初旬にも結果が公表される見通しだったが、発表が遅れている。
その理由を朝日新聞はこう説明する。
「野党は、2007年に年金記録問題を追及し、参院選で大勝した成功体験がある。検証結果が(年金だけでは暮らせないという)新たな政権追及の材料になるのは必至だ。政権幹部は『公表時期が政治マターになった。官邸の考え次第で、参院選後に先送りするかが決まる』との見方を示す」
毎日新聞も、
「政府与党内には『今出せば火に油を注ぐだけ』との見方が支配的だ」
として参院選後に先送りの方向だ、と報じている。