バブル崩壊とリーマン・ショックが管理職にダメージ
職業階層別死亡率。日本は右から2番目、右端が韓国。各国の棒グラフが高いほど死亡率が高い。グラフは左から「上級熟練労働者」「下級熟練労働者」「非熟練労働者」...の順。死因は青ががん、緑が循環器疾患、赤が自殺・事故死、白がその他(「Journal of Epidemiology and Community Health」より)
その結果、欧州8か国ではすべての国で非熟練労働者の死亡率が最も高く、同じように上級熟練労働者の死亡率が最も低かった。これに対し、日本と韓国では、上級熟練労働者の死亡率が、農業従事者に次いで最も高くなっていた=グラフ参照。グラフを見ると、上級熟練労働者の死亡率は下級熟練労働者に比べ、たとえばフランスやスイスではほぼ半分以下、フィンランドやリトアニアでは3~4割なのに対し、日本では約1.1倍、韓国では1.7倍だった。
これは、いったいどういうことか。J-CASTニュース会社ウォッチ編集部の取材に応じた小林廉毅教授はこう説明する。
「あくまで推測ですが、バブル崩壊後の日本では、リストラによる人減らしや長時間労働の負担が管理職や専門職に集中したのだと思われます。そのストレスが非常に強く、大きなダメージになったのでしょう」
それを裏付けるかのように、死亡原因別にデータを分析すると、管理職と専門職は、悪性新生物(がん)、自殺・事故死、循環器系疾患(心臓病、脳梗塞、脳卒中など)、感染症など、すべての死因で死亡率が上昇し、とくにがんと自殺の上昇が顕著だった。ストレスが直撃したようだ。
ところが興味深いことに、下級熟練労働者、つまり管理職ではない一般サラリーマンの死亡率は一番低い。管理職・専門職の約7割だ。韓国では非熟練労働者より高いのだが......。これは、日本の場合は「サラリーマンは、気楽な稼業と......」とでもやっているということだろうか。小林教授はこう語る。
「低い理由はよくわかりませんが、日本ではどの職種も基本的にもともと死亡率が低いのです。むしろ、上級熟練(管理職と専門職)の死亡率アップがきわだったため、下級熟練労働者の死亡率が低い印象を与えるのかもしれません。それだけ、管理職と専門職にインパクトが強かったということです」