RIZAPになにが起こった! 「指南役」のすげ替えに危ぶまれる社長の独り立ち(大関暁夫)

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部外者の自分が退いて社長の求心力を強める

   その流れで考えると、松本氏が改革に道筋を付けて今回自ら身を引いたことは、合点がいきます。

   改革の方針を固めて入口を切り拓いたことで、これ以上部外者である自分が組織内で改革を先導することが本当に組織にプラスに働くのか、というのが基本的な思いであろうと。その理由として、組織改革の力学を知る松本氏であればこそ、部外者である改革先導者の自分に反発する組織内に生じた負の反発エネルギーを、正のエネルギーに変換することが肝要であり、今こそ早急に社長への求心力を高めて改革を前に進ませることが望ましい。

   コンサルタントとしては、そのように考えるのが常套であるからです。私の経験からは、松本氏の意図するところは、間違いなくそのような組織を思う気持ちであった、と確信します。

   ところが、今回の決算発表では同時にもう1件の新たらしい動きが公表されています。それは、松本氏の退任と入れ替わる形で、元住友商事副社長でビジネス系ITサービス会社SCSK社長、会長を歴任した中井戸信英氏を取締役会議長として迎える、というものです。

   いわば、中井戸氏は松本氏に代わる新たな経営「後見人」です。調べてみるとこの人事は、松本氏には何の関係もなく、以前より瀬戸社長が経営指南役として頼っている経営コンサルタントの新将命氏に相談し、紹介してもらったのだといいます。

   社内で、外部からのプロ経営者手主導のやり方に反発が起きたことを受けてなお、新たなプロ経営者をトップの右腕として組織内に向かい入れる瀬戸社長。このやり方には、私個人として大きな違和感を禁じ得ない、そんな印象を強く受けています。

   私もこれまで規模の大小にバラツキはありますが、数々の企業経営者の経営相談役として、さまざまなアドバイスをさせていただいてきました。そのような折に何より一番注意していることは、社長を経営指南役であるコンサルタントの操り人形のようであるかのような印象を社員に絶対に与えてはいけない、ということです。

   私の独立直後、とある企業のお手伝いをする中で、「社長がコンサルタントの言いなりになっている」「社長は自分立ち社員の意見よりも、コンサルタントの意見を重視している」と多くの社員に感じさせてしまい、急速に社長の求心力を失わせてしまった苦い思い出があるのです。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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