「富一代」「富二代」そして一般客へと「マネ」ていく
「受け入れ体制」の問題は、何も教養や文化に限った話ではありません。
たとえば、中国の富裕層は日本の有名レストランでも、貸し切りは無理としても、できるだけそれに近い形で食事をしたい。なにせプライベートジェットで来日することが珍しくない人たちですから。
でも、そういうクローズドな空間を整えているレストランはまだ少ないうえに、そもそも予約の電話を入れた時点で、「中国人はお断りです」と言われてしまうことが珍しくありません。これは、富裕層に頼まれて予約を入れたことがある私自身、個人的に何度も体験していることです。
「中国人はマナーが悪く、ほかのお客さんの迷惑になるから」というのが店側の言い分のようですが、日本文化に関心を持つような「富一代」、教養がある「富二代」なら、日本でのマナーをちゃんと理解してくれます。
もし、中国の富裕層が日本でさまざまな楽しみを思う存分味わえるようになれば、そうした層よりも所得は下がるけれど、十分なお金を持つ「プチ富裕層」がそれをマネしようと日本を訪れ、消費します。さらにその後には、ボリュームが最も大きい一般客が、先行した富裕層、プチ富裕層をマネしていく。
日本での旅行消費額が膨らんでいくこんな好循環に向けて、多様化している富裕層の好みに目を向けてみてください。
プロフィール
劉 瀟瀟(りゅう・しょうしょう)
三菱総合研究所 研究員
北京市生まれ、外交学院(中国外務省の大学)卒業後、みずほコーポレート銀行(現みずほ銀行 中国)、東京大学大学院(修士課程修了)を経て、三菱総合研究所に入所。主な専門分野は中国人の行動・意識分析やマーケティング。首相官邸「観光戦略実行推進会議」に有識者として関わる。メディアへの寄稿、テレビ出演多数。