若手研究者が言っておきたいと考えた「ロボット」の本当の現状(気になるビジネス本)

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   人手不足をカバーする切り札として近年、ロボットがもてはやされている。その働きぶりにはソツがなく、これからどんどん活躍の場を広げる可能性が伝えられている。

   ところが、ロボットの現状を見渡し、未来を見通した本書「超ロボット化社会 ロボットだらけの未来を賢く生きる」(日刊工業新聞社)では、ロボットが多方面で活躍する可能性は大いにあるものの、満帆状態で快走しているわけではないという。ロボットに対する認識を新たにし、未来への視線のピントをシャープにしてくれる一冊。

「超ロボット化社会 ロボットだらけの未来を賢く生きる」(新山龍馬著)日刊工業新聞社
  • ホンダの二足歩行ロボット「ASIMO」
    ホンダの二足歩行ロボット「ASIMO」
  • ホンダの二足歩行ロボット「ASIMO」

ロボットに対する期待が過剰だと......

   著者の新山龍馬(りゅうま)さんは、東京大学の若手ロボット研究者。東大工学部機械情報工学科卒業、東大大学院博士課程修了を経て米マサチューセッツ工科大学(MIT)で研究員生活を送ったのち、2014年に東大に戻り大学院情報理工学系研究科講師を務めている。専門は生物規範型ロボットおよびソフトロボティクスという。

   ソフトロボティクスは、従来のロボットが素材も動かし方も硬いのとは対照的に、ボディーを柔軟な材料で構成し制御でも柔らかくスムーズな動きが特徴で、人との接しかたが変わるのではないかと期待されている。本書のテーマはそれにとどまらず、ロボット全般にわたってカバー。その内容は解説書なのだが、ソニーのアイボやホンダのASIMO(アシモ)など引き合いにだし、平易な言葉遣いで親しみやすく分かりやすい。

   アイボやアシモなどの人気になったロボットばかりではなく、読み進むうちに「鉄腕アトム」や「ドラえもん」、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「カーズ」などの漫画やアニメ、映画のSF作品への言及が増えてくる。いよいよそういう時代もやってくるのかなと、にわかに期待が高まってくる。だが、しばらくするとその期待はしぼんで、ざらついた気分になり、落ち着かない思いに襲われる。

   サイエンスライターの森山和道さんが巻末に添えている「解説」で、その理由がわかった。

   「トーンはどちらかというと否定的で厳しい。口調こそ優しいが、達観した視点で、モビリティ、産業用ロボット、人と共存するパートナーロボット、サービスロボット、人工知能などの現状と背景の考え方がありのままに語られている。

   ひと言でいえば、現状のロボットには、まだまだできないことが多く、マスメディアが持ち上げるほどバラ色ではない」。まさに解説だ。新山さんは、ロボット研究の未熟さが分かっていて、私見を「読み流すかもしれない」書きぶりで吐露していたのだ。「期待を過剰に持ち上げられているロボットに対して、専門家だからこそいわずにいられなかったということだろうか」と森山さん。

   東大大学院工学系研究科の松尾豊教授は、本書について「優れた科学者ならではの視点と平易な言葉で、ハッとするようなことがたくさん書かれている」という感想を寄せている。それらは専門家にとっても「今までの思い込みをあっさり壊す」力を秘めている。

『超ロボット化社会 ロボットだらけの未来を賢く生きる』
新山龍馬著
日刊工業新聞社
税別1500円

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