「検査に正直に回答しない人もかなりいる?」
村松さんはこう指摘する。
「ストレスチェックは、プライバシー保護のため、本人が面談を申し出ない限り、職場には個々の結果がわからない仕組みとなっており、面談を申し出た時点で、職場に『高ストレス者』であることが伝わってしまいます。強いストレスを抱えている人の一定数が、職場、同僚、上司に非常にネガティブな感情を持っています。そこで、ストレス状態を職場に伝えて状況を改善しようとするより、バレたらクビにされる、追い出される、仕事を割り当ててもらえなくなる、といった不安のほうが大きいと考えられます」
もともと自分のストレスの原因が職場の上司・同僚なのだから、その上司・同僚がいる限り、専門医を受診しても何も事態は変わらない。いやむしろ、専門医を受診して上司にばれたら、どれほどひどい仕返しを受けるかわからない、という不安があるというわけだ。これはかなり深刻な問題かもしれない。
それを裏付けるように、ストレスの因子別に「何も行なわなかった」人の割合を調べると、「職場の対人関係」「働きがい」「同僚からのサポート」などで悩んでいる人が多かった。
いったい、こういう人たちにどう対応すればよいのだろうか――。
村松さんは、
「ストレスチェックでは、高ストレスの評価が出ても専門医を受診しない人が多いという問題点以外に、じつは『調査に正直に答えない』という問題点もあるのではと考えています。何を回答してほしいかがわかる問題ばかりなので、自分が置かれている状態を無視して、中位のストレスを目指して回答をする従業員がおそらくいると思うのです。
大きな会社ならいいですが、従業員の少ない会社なら、性・年代などで誰の回答か相当絞り込める心配があります。そこで、『特定されて不利益をこうむりそうだから受けない』『受けても正直に答えない』という人が出てきます。ストレスの高い従業員の場合、職場に知らせずに仕事の負担を軽減することはできませんから、ストレスチェックは広く推奨すべきですが、こうした面談を受けることに抵抗を感じている人に対し、会社側は、面談でどのようなメリットがあるのか、従業員に丁寧に示していく必要があると思います」
と、指摘する。
(福田和郎)