テレビは「ヒーローもの」の単純な図式が大好き
というわけで、広報パーソンはこの4つのポイントを常に意識して自社の商材をアピールする必要がある。その際、もう1つ気をつけるポイントを長谷川さんは明かした。
「それは、ヒーロー感の演出です。『社会問題』や『困った』『不便』というヒール(悪役)の襲来を撃退するために、自社の商材が登場するというストーリーにしてあげると、より効果的です」
はて。ハリウッド映画「アベンジャーズ」のようにするのだろうか? 数年前、ある大手カード会社が新サービスを始めた。予約の取りづらい有名飲食店について、「この店でキャンセルが出たら優先的に連絡してほしい」という会員の希望と、「突然のキャンセルにいつも困っている」という加盟飲食店の悩みを結びつけるサービスだ。急に生じたキャンセル席をカードが買い取り、会員にすぐ公開して購入希望者を募る仕組みだ。
このキャンペーンの発表会見をプロデュースした長谷川さんは、当時まだまだ知られていなかった「飲食店のドタキャン」の深刻さを知ってもらうために、実際にドタキャン被害にあった店を取材先として番組サイドに紹介するなど、社会問題としてアピール。この新サービスを「ドタキャン退治のヒーロー」にする演出を心がけた。
「小池百合子さんが『都議会のドン』を悪役にして都知事選で圧勝したのと同じ方法ですね。最近だと『NHKをぶっ壊す!』でお馴染みの『NHKから国民を守る党』代表の立花孝志さんもそう。いわゆるVS構造のシングルイシューです。メディアが求めているのはこうした新しいヒーロー像の登場で、特にテレビはわかりやすい構図が大好きなのです」
セミナー後半。出版社に勤めているという参加者から「ファッション業界を徹底的に批判する本を出すのですが、どうアピールしたらよいでしょうか」という質問が出ると、長谷川さんはこう答えた。
「テレビは臆病だからストレートな批判モノに加担することはまずありません。しかし、単純な批判ではなく、その批判の対象を悪役に仕立て、がっぷり四つに戦うヒーローものにすると取り上げられやすくなります。『NHKから国民を守る党』の例でいうと、単純にNHKを批判するのではなく、NHKを見てもいない人びとを救う、撃退してくれるヒーローという構図を、長年YouTubeを使って形成してきました。ようやくその空気が醸成されてきたからこそ今回、大きく票を伸ばしたのではないでしょうか」