「会社をテレビに取材してもらうには?」放送作家が裏ワザ伝授!《前編》 「撒き餌」作戦で番組を釣りあげよう!

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   「わが社をテレビが取材してくれたら、どれだけPRになることか」。経営者や広報担当者なら一度はため息をついたことがあるのではないか。

   「ヨッシャ~、お任せあれ! その裏ワザを教えましょう」というセミナーが開かれた。講師はテレビ界の表も裏も知り尽くした放送作家。J-CASTニュース会社ウォッチ編集部は、企業の広報担当者たちの「あわよくば」という期待から熱気ムンムンのセミナーを取材した。

  • テレビに取材してもらうコツは?
    テレビに取材してもらうコツは?
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テレビがほしいネタをWeb上にバラまいておく

   セミナーが開かれたのは2019年5月22日、東京都新宿区のオフィスビルFORECAST新宿SOUTH2階。市場調査分析の@(アット)クリッピングと、PR戦略コンサルティングのカーツメディアコミュニケーションの共催だ。

   講師は、これまで200本以上(特番を含む)の番組制作に携わってきた放送作家の長谷川大雲(はせがわ・だいうん)さん。放送作家は、番組コーナーの企画を出したり、進行の台本を書いたりする外部ブレーン。あまり知られていないその仕事を、長谷川さんはこう表現した。

「いわば、番組の構成を考える設計士です。制作現場のトップのプロデューサーを戦国武将にたとえるなら、放送作家は軍師のような存在です」

   「敵を知り、己を知れば、百戦して危うからず」(孫子)という。その軍師がまず明かしたのは、「敵」すなわちテレビ番組はどうやって作られるかというノウハウだ。すべては番組構成会議からスタートする。まず、プロデューサーから「お題」が出される。

   たとえば、情報番組であれば今年最大のイベント、改元前の時期、各番組からこんなお題が出されたようだ。「平成を懐かしむ特集企画を募集します!」。それを受けて放送作家はアイデアをひねり出す。

「平成をヒットアイテムでふり返るなんてどうだろう。さて、何でふり返るとおもしろそうかな?」

   こうして企画を具体化させていく。「食べ物」なら「グルメでふり返る平成史」。「アパレル」なら「ファッションでふり返る平成史」。「出版」なら「ベストセラーでふり返る平成史」といった具合だ。

   そしてその企画が採用されると、現場の制作スタッフがVTRを制作するために必要な細かいリサーチを開始。ロケを行い、晴れてオンエアとなる。そしてここにPRのチャンスが潜んでいる、と長谷川さんは明かす。

   たとえば、「食べ物で振り返る平成史なんておもしろそう!」と感じたら、次に放送作家が取る行動は、ネット検索だ。年代順に流行ったグルメ情報をまとめた年表のようなものがWeb上に転がっていないかをリサーチする。平成元年にはこんなグルメが一世を風靡、きっかけは〇〇で発売元は××などと細かいレポートまで記されていたら企画として成立。VTRを制作するうえで必要な情報が集まりやすいと考え、「これならイケる」と番組に提案するのだ。

「つまり、あらかじめテレビ局の制作スタッフがほしがりそうな情報を先回りしてWeb上にバラまいておくと、皆さんの会社の商材が紹介されるチャンスが増す。取材される確率が飛躍的にアップします」

   釣りでいう「撒き餌」のようなものだ。しかし注意点もある。ある出版社が「平成のベストセラー」というまとめ情報をWeb上に置くとしよう。気をつけるポイントが「自社の本ばかり紹介してはいけない」ということだ。情報が偏るうえに宣伝臭が濃くなり、テレビ局スタッフから敬遠される。他社の本も公平に扱う必要がある。あくまでも自社の利益より、「番組に役立つ有意義な情報を提供しよう!」というスタンスが理想的だ。そのうえで自社のメリットも探るのだ。

「たとえば、まとめ情報をネットにあげる際、人を立てることです。出版社内にメチャクチャ本に詳しいスペシャリストがいれば、その人にベストセラーの背景やウンチクを書かせ、ひと味違うアレンジのまとめ企画にするのがコツです。スペシャリストを前面に押し出してやれば、その人のキャラクター次第では、その道の専門家としてテレビ出演するチャンスも生まれます。社員だからカネもかからないし、宣伝効果もあがります」

改元フィーバーのなか、大ヒットした企画のスゴさ

   ここで長谷川さんはクイズを出した。

   「この番組構成会議で議論されるネタは、いったいどれくらい先のものを決めているでしょうか?」

セミナーで熱弁をふるう長谷川大雲さん
セミナーで熱弁をふるう長谷川大雲さん

   答えは、情報番組の特集では10日~3週間先、バラエティーだと2か月先だ。となると、テレビに対する「撒き餌」、つまり情報発信は先を見越して準備する必要があるわけだ。

   今年はゴールデンウィーク(4月27日~5月6日)が10連休だった。改元フィーバーと重なったため、多くの企業がさまざまな「連休レジャーもの」「平成回顧もの」情報を大量に発信したが、その中で断トツにテレビで取り上げられた企画があった。長谷川さんが「個人的にゴールデンウィークPR大賞を贈りたい」と絶賛した企画が「お父さん預かります」キャンペーンだ。

   大阪の荷物預かりサービスの貸し会議室業者が、GW限定で行なったアイデア企画だ。母親と子どもが遊んだり、買い物したりしている間、行き場のないお父さんが時間をつぶせるスペースを提供したのだ。1時間500円(終日1000円)で、DVD鑑賞、漫画、ゲームのほか、ビール付きドリンクバーと、内容はかなり充実。大阪の話題なのに、東京のテレビ局が軒並み取り上げた。

   長谷川さんは、このアイデアのスゴさをこう説明する。

「『お父さん預かります』というPR施策は、その空間で提供されるサービスに関連する業種ならどんな会社が行っても違和感がない。もし、『お父さん預かり所』内で飲食を提供するのであれば、飲食チェーンや食品メーカー。ブックコーナーを設ければ出版・書店業界。また家電、住宅、寝具、健康器具となんでもありで、汎用性が高い。レンタルスペースを借りるだけで予算もかからない。まさに広報にとって見習うべき点の多いPRサービスだといえます」

   さて、ここからは実戦編だ。長谷川さんはPR活動のスタートである「プレスリリースの作法」を伝授した。

「各メディアが受け取るリリースは1日に200~300通もあります。目に止めてもらうには、『短く簡潔に』を徹底すること。放送作家のネタ出しのルールは、ペラ1枚に2~3企画が不文律。番組ブレーンでもこれなのに、外部から送りつけられるリリースが5~6枚もあっては読まれるはずがありません」

   そして、「タイトルが命」と強調した。魅力あるタイトルにするコツは「パロディー化」することだ。たとえば、「リリースは、タイトルが『命』」というような見出しをつけたいのなら、「リリースは、タイトルが『9割』」にする。要はビジネス書のパロディーだ。「人は見た目が9割」「伝え方が9割」「心配事の9割は起こらない」......と、ここ数年、出版業界ではタイトルに「9割」というワードをつけるのがトレンドだ。またPRイベントとして多い表彰モノも「○○大賞」より「○○総選挙」というタイトルをつけた方がイマっぽい。

プレスリリース作法の基本はパロディー化にあり

   ここで長谷川さんが直近の事例を紹介した。あるクライアントのプレスリリースをパロディー化してみた実例だ。24時間営業のフィットネスジムが、フランチャイズ展開を強化するため、オーナー募集の説明会を開催する。メディアにその取材を呼びかけるリリースを定期的に配信してきたが、これまでこんな感じのタイトルだった。

   「24時間フィットネスジム○○ フランチャイズ加盟オーナー説明会が大反響! オーナー追加募集につき、××月に大規模説明会を開催」

「これを見たメディアの反応は、『は~、これが何か?』という冷たいものだと思います。これをテレビ好みにパロディー化してみましょう」

   そう言うと、長谷川さんは大胆にパロディー化してみせた。

   『コンビニオーナーを救うフランチャイズ乗り換え説明会 24時間でも深夜は無人営業だから人手不足問題も解決!』

   いま社会問題になっている「コンビニ24時間営業」と「人手不足」のワードが含まれ、いかにも取材の意義がありそうにみえる。また携帯電話会社でおなじみの「乗り換え」というポップなワードも挿入されているから、「おおっ!」と引き付けること請け合いだ。

   もう一つリリースで大事なツボは、「メディアはランキングや○○大賞が大好物」ということだ。たとえば、「理想の上司ランキング」というテッパン企画がある。去年のランキング1位は、内村光良、2位ムロツヨシ、3位に博多大吉......といった内容だ。これを自分の業界に関連するワードに変えてみる。ウェディング業界なら「理想の夫・妻」、教育関連業界なら「理想の先生」、人材サービス業界なら「パワハラされそうな上司」、介護福祉業界なら「理想の娘・嫁・息子」といった具合だ。

   しかも、そのランキング1位に、仮にあの番組のMCがなったとしたらどうだろう。たとえば、「理想の夫ランキング」1位にフジテレビ・ワイドナショーのMCであるダウンタウンの松本人志さんが輝いたとしたら......。

「私がもしその番組の総合演出なら、取り上げざるを得ませんね」

あの有名なグランプリ大賞の驚きの正体

   さらに、グランプリ形式のPR手法も効果的だ。「流行語大賞」や「ベスト・ドレッサー賞」も、もともとはある会社のPRのためのイベントだった。「ぜひ、みなさんの会社もユニークな賞を創設してみてください」と長谷川さんは勧めた。

   とはいえ、「わが社には授賞式を行なう予算もないし、とてもとても......」とあきらめたアナタ。ここで長谷川さんは、あるとんでもないグランプリを例に挙げた。

「すっかりテレビ局の年末の風物詩になった恒例企画に『世界で最も美しい100人』があります。毎年、日本人女性がランクインするかどうかで各局が取り上げ、2018年も『TWICE』のサナをはじめ、石原さとみや小松菜奈ら5人が選ばれて話題になりました」

   ところが、このグランプリの仕掛人の正体には、驚きの秘密が隠されていた。なんと、米国の無名映画評論家が個人のブログレベルで勝手に発表している、まったくの主観ランキングだというのだ。

「ハリウッドのどれだけ権威のある団体がやっているかというと、全然そんなことはなくて、米国ではほぼ誰も知らないグランプリ。もちろん授賞式もありません。それなのに何をどう間違ったのか、日本と韓国だけですごい盛り上がりを見せています。あなたもアイデア次第で、超メジャーなグランプリの仕掛人になれるかもしれないのです」

と長谷川さんはセミナー参加者に呼びかけた。

   後編では、「テレビの内情、そんなことまでブチまけていいの?」と、こちらが心配になるほど役に立つ、実戦的な裏ワザの数々をお伝えする。

(福田和郎)


◆プロフィール
長谷川大雲(はせがわ・だいうん)
1969年生まれ。鹿児島県出身。様々な職を経て27歳で放送作家に。以降200本以上の番組構成に携わる。主なレギュラー番組は――。
テレビ朝日:「ナニコレ珍百景」「Sma STATION!!」(スマステ)「いきなり黄金伝説」「アレはスゴイはず」「アレはスゴかった」
TBS:「奇跡ゲッター ブットバース」「サタネプベストテン」「ブラマヨ衝撃ファイル!世界のコワ~イ女たち」
フジテレビ:「奇跡体験アンビリーバボー」「(株)世界衝撃映像社」「IQサプリ」
日本テレビ:「週刊ストーリーランド」
また、2016年からは、株式会社カーツメディアコミュニケーションのブレーンとして、多くの企業のPRコンサルティングを務めている。


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