「エンターテック」(エンターテイメント×テクノロジー)をテーマにしたスタートアップ(起業)をサポートする会社「VERSUS」の山口哲一社長は「音楽プロデューサー」という、もう一つの顔をもつ。
吉本興業の大﨑洋会長の「やってみなさい」の言葉に背中を押され、2018年11月末に会社を設立。音楽も企業も「時代の流れ」をキャッチすることが大事。そんな山口社長がオススメする、「時代をつかむ」感覚が磨かれる一冊がこちら......。
政治や経済、わかりにくいことをわかりやすくが「スゴイ」!
「僕が読んでいる本は、佐藤優と池上彰と野口悠紀雄。この三人の本であれば、だいたいは読んでいます。あらゆる分野のビジネスパーソンにオススメできます。読者としてファンでもあるんですが、この三人の著書は本当にいいと思います。
野口さんはもともと経済学者なので、その視点で物事を見ているのですが、とてもニュートラルだと思います」
経済本は難解でとっつきにくいイメージがある。それでも、山口社長は、
「そうですか。でも、随分やさしく書いてくれていると思いますよ。必ずチャプターの後ろにはレジメがあって。工夫して書いてくれているので、読みやすいと思いますけどね。たとえば専門的な、経済学のことでも数式などを使わずに説明してくれています。それは物凄くありがたいことですよ」
と話す。
佐藤優さんは三人の中では政治や地政学などの題材を取り上げているが、「本当に教養の塊のような方なので、読んでタメになります」という。
政治や地政学というと、これもなんだか難しそうだが、
「う~ん。佐藤優さんは本によりますね。僕も宗教学の本とかはよくわからない。ファンなので買って読みましたけど、もう全然わからないです(笑)。クリスチャンじゃないし、聖書のこともよくわからないので、そうするとやっぱり難しいですね。でも、地政学周りの本は凄くおもしろいですよ」
三人の本はだいたい目を通している山口社長だが、「池上彰さんは(出版された本が)多すぎます(笑)。まだ、すべては読めていませんが、読んでいますよ。わかりやすく、とてもオススメします」。
物事の「流れ」の中に本質が潜んでいる
なるほど。山口社長は「今、何が起こっているのか」という、「流れている事象」に興味があるようだ。
「ああ、そうかもしれないですね。現在と歴史みたいなこと。これって、今何が起きていて本質的にはどうなんだろとか。なにかとアナロジー(類比)で見るとか。スティーブ・ジョブズの話に、iTunesのビジネスモデルはiモードとウォークマンから作ったといわれているというのがあるんですよ。そういう話とか、大好きですね。物事を比べて見たり、歴史の流れのようなことに、じつは本質が潜んでいたりすると思うので、現象を掘り下げるということには興味あります。
10代の頃、セックス・ピストルズ(英国のパンクロックバンド)が好きだった時は、ただ感個握的にカッコいいって思っていましたが、時代背景とか社会に起こした影響力などを知って、聴き直してみると、立体的に見えてきますね。そんなふうに考えるのが好きですし、改めて、じゃあ今パンクムーブメントにあたるものはどのようなことなんだろうとか。現在に当てはめて考えたりすることができる本には凄く刺激を受けますね」
山口 哲一(やまぐち・のりかず)
エンターテック・エバンジェリスト、音楽プロデューサー
アーティストマネージメントからITビジネスに専門領域を広げ、2011年から著作活動をはじめる。エンタメ系のスタートアップを対象としたアワード「START ME UP AWARDS」をオーガナイズ。プロ作曲家を育成する「山口ゼミ」やデジタル時代のコンテンツプロデューサーを育成する「ニューミドルマン養成講座」を主宰するなど、次世代の育成に精力的に取り組んでいる。
「デジタルコンテンツ白書」(経済産業省監修)編集委員
経済産業省「平成30年度コンテンツ産業新展開強化事業」検討委員