マグロの検品に「TUNA SCOPE」 伝統の職人技をAIが継承

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   匠の技はAI(人工知能)が継承――。電通は、電通国際情報サービス(ISID)で取り組む新ビジネスモデル開発のプロジェクトで、水産物市場の仲買人らの「伝統の技」であるマグロの「尾切り検品」を、AIを使って行えるシステム「TUNA SCOPE」を開発した。2019年5月29日の発表。

   スマートフォンで天然マグロの尾部断面を撮影してシステムを作動させると、瞬時に品質を判定するという。少子高齢化の影響により、さまざまな産業で取り沙汰されている熟練職人の技能継承をめぐる課題について、AIなどの技術活用で対策を探る取り組みの一つ。

  • スマホで撮影、瞬時に判定
    スマホで撮影、瞬時に判定
  • スマホで撮影、瞬時に判定

マグロの「尾切り検品」をスマホで

   電通とそのグループ会社で、企業向けのソリューション事業やシステム開発事業などを行っている電通国際情報サービス(ISID)は、新しいビジネスモデルや技術開発のための組織であるオープンイノベーションラボを構成。その中で、熟練職人の技術継承をめぐる問題についてAIを活用して取り組む「プロジェクト 匠テック」を立ち上げた。

   このプロジェクトを通じて両社は、総合商社の双日と共同で、天然マグロの尾部断面の画像からAIが品質判定を行うシステムである「TUNA SCOPE」を開発して、その精度などについて実証実験を重ねた。

   「マグロの目利き技能」は、後継者不足が深刻とされ、その継承の代替え方法が模索されていたという。

   天然マグロは、漁場などにより鮮度が異なるので市場では、切られた尾の切断面から品質を見極める「尾切り検品」あるいは「尾切り選別」と呼ばれる確認が欠かせない。

   しかし、水産業界ではその仕事に従事する熟練者が高齢化する一方、マグロ仲買人として「目利き」を備えるまでは10年が必要とされ、育成が簡単ではないという。

   実証実験では、熟練者が4~5段階の品質評価を行ったマグロ尾部の断面写真と検品データをAIに取得させて、画像解析を行うためのシステムを構築。さらに集められたデータにより、チューニングとディープラーニング・アルゴリズムを選定したうえで、アプリとしてスマホに実装した「TUNA SCOPE」(β版)を開発した。

   これを、静岡でカツオやマグロの販売・加工を行っているマルミフーズの工場(焼津市)で、検品業務で試験運用したところ、技術者と85%の一致度でマグロの品質判定に成功した。

   「TUNA SCOPE」によって「最高ランク」判定されたマグロを、調査などのため「AIマグロ」としてブランド化。東京駅一番街の「産直グルメ回転ずし函太郎Tokyo」で3月下旬の5日間にわたり提供したところ、約1000皿を売り上げ、注文客の89%から「高い満足度を示す回答」を得た。

   電通などは「TUNA SCOPE」の精度向上と実用化に向けた取り組みの継続と、今回の経験を、他の産業分野でのAIによる「目利き」の継承に応用して、社会や企業の課題解決に貢献したいとしている。

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