政府は、天皇の即位に伴う2019年秋の「即位礼正殿の儀」に合わせて「恩赦」を実施するつもりのようだ。
だが、絶対君主制などからは程遠い象徴天皇制の今の時代、皇室の慶事、弔事に合わせた恩赦は、果たして適切なことだろうか。天皇の即位がなぜ恩赦につながるのか――。それは内閣による皇室の政治利用としか言えないのではないか。
「更生の励みになる」は本当か?
今回、恩赦がおこなわれれば、天皇と皇后が結婚した1993年以来、26年ぶりのことになる。さらに、さかのぼると1989年の昭和天皇の大喪の礼、翌90年の天皇(現上皇)の即位の礼の際にも恩赦が実施された。
戦後10件の恩赦の多くは皇室の慶弔事に伴うもので、それ以外は56年の国際連合加盟に伴うものなど3件である。
恩赦とは、裁判で決まった刑罰を特別に許したり、軽くしたりすることで、内閣が決定し、天皇が認証する国事行為である。
中央更生保護審査会が本人らの申し出をもとに、日常的におこなっている「常時恩赦」のほかに、皇室の慶弔事などの際に、内閣が対象になる罪や罰を決めて一律におこなう「政令恩赦」と、一定の基準を設けて申請に基づいておこなう「特別基準恩赦」がある。
恩赦をおこなう理由について、所管する法務省は「有罪の言い渡しを受けた人々にとって更生の励みとなる」と説明している。しかし、恩赦は定期的におこなわれるものではないし、自分が対象になるかどうかも分からない。そんなものが更生の励みになるとは考えにくい。
また、恩赦がおこなわれた際に、たまたま刑に服していた人たちはその恩恵を受けられる。しかし、自分の服役中に一度も恩赦に出合わなかった人も多いはずだ。不公平ではないか。