トランプ氏「個人的関係と国同士の交渉はまったく別物」と考える
ところで、識者は日米首脳会談の結果をどう見ているのだろうか。タレントのパトリック・ハーラン氏は「選挙後はわかっているな!?というトランプ氏の恫喝」と指摘する。
「トランプ氏の発言で気になるものがいくつかあった。話しぶりから推測するに、選挙までは交渉を控えるが、『終わった後はわかっているな』という言外の意味が読み取れる。日本側には、これだけもてなしたのだから、『今後も無理な要求はしないよね』という期待があるだろう。だが、大統領はまったく逆のことを考えている。今後、日米双方で『わかっているだろうな合戦が始まるかも』」(毎日新聞)
木村福成・慶応大学教授のように、
「トランプ氏が米国産農産物の輸入拡大だけでなく、今後は日本車の輸出規制で『成果』を追及する可能性がある。米韓自由貿易協定の再交渉では、驚くほど早く、韓国が鉄鋼輸出の数量規制などを受け入れた。北朝鮮などの安全保障問題とリンクされて押し込まれたのだろう。日本も安保上、対米関係を良好に保つ必要があり、苦しい立場に置かれている」(朝日新聞)
と、日本苦戦という立場が多いが、細川昌彦・中部大学特任教授のように「日本は急ぐ理由はない」と冷静さを保つことが大切という意見もある。
「仮にトランプ政権が自動車に25%の追加関税を課せば、米国経済も打撃を受ける。トランプ氏は自分の首を絞めることはしないだろう。一方、米国と中国の貿易戦争は今後も延々と続く。トランプ氏の選挙戦にとっては、中国との対立が続いたほうが逆にプラスに働く。米国議会も対中国で強硬姿勢を示しており、安易に妥協すると逆に批判を受けることになる。彼は政治的嗅覚が鋭いので、株価さえ暴落しなければ大丈夫とも考えているはずだ」(毎日新聞)
今回、安倍首相は「抱きつき外交」(朝日新聞)と揶揄されるほど、トランプ氏を過剰にもてなしたが、「まったく効果がない」と冷ややかなのは、トランプ氏をよく知る米ヘリテージ財団上級研究員のブルース・クリングナー氏だ。読売新聞でこう語っている。
「トランプ氏は、個人的関係は国と国との交渉とは全く別物と思っているフシがある。特に貿易問題では、具体的な交渉はほとんど担当者に任せきりのようなやり方だ。いくら安倍首相との関係が良好でも、要求を引き下げるとは思えない」
この4日間の「トランプ狂想曲」は何だったのだろうか。
(福田和郎)