「通貨のやり取り」はすべての企業が避けて通れない
キャッシュレス化の進展には、別の観点からのビジネスチャンスもあります。
キャッシュレス化による通貨のデジタル移行は、通貨を単なる通貨としての流通価値だけではない存在に変えることにもなります。すなわち、誰が何をいつどこで買ったのかがすべての通貨やり取りに紐付けられることになるわけで、通貨の流通価値はもはや額面の金額だけではなく活用、流通しうる情報としての価値を持つのです。これは個人に限らず、法人同士のやりとりでも同じことです。
通貨のやり取りを通じてそのやりとりに関する情報を容易に持つことが可能になり、その情報を分析、二次利用することで新たなビジネスチャンスも生まれるでしょう。今、QRによる支払サービスに参入する多くの企業が、しのぎを削っている理由はそこにあります。
情報ビジネスはスマホと市販のアプリでも、さまざまなことができる今の時代、やり方一つで企業の大小を問わずにビジネスチャンスを作り出すことが可能でもあり、新たなビジネスは、すぐそこに転がっているかもしれません。
また、これまでビジネスにおけるIT化の流れなど自社とは無関係と思っていた企業にも、通貨のやり取りという、すべての企業が避けては通れない部分のキャッシュレス化が進展することで必然的にその世界に引きずりこまれ、その順応力の有無が企業の運命を決定づけることにもなりかねないのです。
1970年代にドル相場が世界的に変動相場制に移行すると、ビジネスの本格的な国際化時代が幕開けしたと言われ、「これからの経営者は企業の大小問わず、外国語と国際感覚を身につけていないと成功できない」と言われました。
今、動き出したキャッシュレス化の流れは、この時に相当する、いやむしろこの時以上に大きなビジネスのパラダイムシフトであると言えます。これからの経営者は企業の大小問わずに、キャッシュレス化とそれに伴って変化するIT感覚を身につけていないと成功できない。そう言えるように思います。(大関暁夫)