最近のビジネス界においてキャッシュレスの話が話題にのぼることが多く、私のところにも地域の経済団体や金融機関などから、キャッシュレスをテーマにその基本的知識や展望についての講演やセミナーの依頼が多く寄せられています。
中小企業経営者の方々の関心はどうかというと、じつはこれがいまいちで、きのうお目にかかった製造業の社長も「大企業や、日銭商売の小売り、流通業、商店主の皆さんはいろいろ頭を悩ませているようだけど、われわれ製造業にはあまり関係なさそうなので、当面静観でいいかなと思っています」と、「キャッシュレスにわれ関せず」の姿勢。中小企業経営者は本当に、この問題に無関心でいいのでしょうか――。
給与振込の概念が変わるかも......
確かにここ最近、新聞や雑誌などで取り上げられているキャッシュレスに関する話題の大半は、乱立ぎみのQRコード決済に関するキャンペーン実施の話題や、小売店がQRコード決済を契約した際の決済手数料の比較や導入に伴う機器設置の要否や初期コスト比較などです。
これらは言ってみると、キャッシュレス化問題の下流部分にあたる話ばかりであって、どうもその源流である本来知るべき上流部分の話が置き去られているように思えます。そんな状況であるから、現金取引を主とする小売流通に関係のない事業の経営者たちは、どうもこの問題を身近なものとして捉えられていないのかもしれません。
キャッシュレス化で押さえるべき本質はどこにあるかと言えば、まず何より最終的には現金取引が存在しなくなるという考え方です。すでに企業間での支払いのやり取りが振り込みを中心としたキャッシュレスになっているとはいえ、すべての現金がなくなるということになるならば、事業運営上のさまざまなシーンで大きな変化がもたらされることになります。
もちろん、現金管理事務が削減されることで効率化に大きく資するであろうことは間違いありませんが、変化はそこにとどまりません。どの企業にも関係のある身近な一例を上げるなら、給与振込の概念が変わる可能性だってあります。