「座席」裁判、場合によってはハラスメントに
これからの暑い季節ですと、エアコン直下の席を避けたいという問題も比較的ポピュラーでしょう。また、宴会の幹事さんの中には、誰と誰を隣にしたらいいのかまずいのか。そんな問題に悩んだ方もおられるでしょう。
最近クローズアップされているのは聴覚が多数派よりも敏感な人や音恐怖症(ミソフォニア)の人への配慮です。たとえば電話のそばなど、うるさい席から離れた席へ座ってもらうという合理的配慮が望ましいとされています。
そんなことまで会社や管理職が面倒を見るなんて、しんどいと思われる方もおられるでしょう。しかし、座席の問題が訴訟で争われた事例さえあります。
従業員が部屋の出入口に自席が指定されたことを「ハラスメントだ」と主張した裁判があったのですが、裁判所は会社ないし上司がその裁量によって座席を指定できるとして、従業員の主張を認めなかった一方、座席の指定が裁量の範囲を逸脱している場合には違法となる余地を残しました(2004年5月19日 東京地方裁判所判決、労働判例879号61頁)。
このように座席の問題は、一見些細に見えつつも、組織内の微妙な人間関係、希望の伝えにくさ、合理的配慮、ハラスメントの問題も関わる少々奥が深い問題です。
新年度を迎えて管理職になられた方、新人のOJT担当をすることになった方もおられることでしょう。座席の問題にも意識を向けると、業務がスムーズに進むと思います。(篠原あかね)