「仮想通貨」って聞いたことはあるけれど、実際になにかの役に立つんだろうか――。そんなふうに思っている人は多いのではないでしょうか。
仮想通貨は主に、「決済」「送金」「価値の保管」の3つの機能があります。今回は私たちにとって一番身近な「決済」に焦点を当て、既存の決済手段である電子マネーとの違いをみてみます。
キャッシュレスとさまざまな決済手段
2019年に入り「キャッシュレス」という言葉をよく耳にするようになりました。キャッシュレスとは、カードやスマートフォンを使用した電子決済のことで、具体的には、(1)クレジットカード(2)電子マネー(3)ポイントサービス、そして(4)仮想通貨――の4つがあげられます。
たとえばJR東日本が提供するSuica(スイカ)は、交通機関や多くの店舗で利用できることから、代表的なキャッシュレス決済といえます。ちなみに、スイカは2018年3月時点で7000万枚弱が発行されており、利用できる店舗数は約50万店舗と、年々増えています。
また、モバイルSuicaは約550万人が利用しており、この記事を読者の中にも、財布や定期入れにすらSuicaのカードを入れていないという人が少なくないのではないでしょうか。
さらに、キャッシュレス文化が浸透しはじめている理由として、PayPayやLINE Pay、メルペイなどの大手企業がペイメントサービスの提供に力を入れていることがあげられます。
加えて、2017年頃から話題となっている仮想通貨(暗号資産)も、キャッシュレス決済の一つと言えます。
ただ、仮想通貨がキャッシュレス決済の手段として使われている事例は、まだまだ少ないです。前回の記事(「Suicaに仮想通貨をチャージ! 使ってメリットを感じられるのはこんな人」)で、仮想通貨取引所のDeCurret (ディーカレット)が、仮想通貨をSuicaにチャージできるサービスについて書きましたが、それもまだ検討段階です。このサービスが実現して、Suicaを通じて仮想通貨で買い物ができるようになれば、「仮想通貨でキャッシュレス」もグ~ンと進むことと思います。
電子マネー、ポイントサービス、仮想通貨の違いを知る
とはいえ、キャッシュレスといっても、さまざまな種類やサービスがあり、どれを使えばいいのかわからない人も多いと思います。
そこで、電子マネーとポイントカード、仮想通貨の3つの決済手段を、その用途ごとに比べ、どの場面でどれを使えばいいのか、ご紹介します。
まずは、3つの決済手段の違いを見てみましょう。下表のとおり、仮想通貨と電子マネーは、資金決済法という法律によって定義されていることがわかります。この法律によって、できること、できないことが分かれている。これが基本です。
※なお、この分類の中でも多種多様なサービスがあり、それぞれ法解釈が異なります。あくまで目安としてご覧ください。
「3つの違い」をみると、用途別に使い分けたほうがよい理由がわかると思います。
仮想通貨は、法定通貨ではありません。また、その多くは財団やプロジェクト運営団体などの非営利団体が開発や運営を行っています。
一方、電子マネーとポイントカードは必ずサービス提供者が存在します。そのうえで電子マネーは「前払式支払済手段」として、資金決済法の対象となるものを指します。前払式支払手段とはその名のとおり、支払い前に電子マネーを買って(チャージして)おく必要があるキャッシュレスのことです。
なお、ポイントカードは「付与される」もので、購入により手に入れることができないため、基本的には資金決済法の対象外になります。
支払いなら電子マネー、送金なら仮想通貨
そこで、結論です! 用途別にオススメするキャッシュレスは次のとおりになります。
【支払・優待機能】電車やコンビニなどの日常生活で頻繁に使いたいなら、電子マネーやポイントサービス。
リアル店舗の買い物などでの支払いには、決済端末の導入数から電子マネーに軍配が上がります。また、価格が法定通貨に固定されているため、安心して利用できます。
【送金機能】知人などに送金したいなら、海外の場合は仮想通貨。国内の場合は電子マネーや仮想通貨。
ビットコインを代表とするP2P(ネットワーク上にあるコンピュータが中央のサーバーを介さずに一対一で通信すること)方式のネットワークによって、海外への送金が容易にできることから、送金には仮想通貨が向いています。
また、最近では電子マネーも送金できるサービスが増えており、同じサービス利用者であれば、電子マネーでもいいでしょう。
【投資の機能】価格の値上がり益を狙うなら、仮想通貨。
日本円と連動しておらず、株価や米ドルのように価格変動があるのが仮想通貨。そのため、投資をするのであれば仮想通貨です。価格は常に変動しているため、値下がりリスクがある一方、上昇して利益が得られる可能性もあります。また、取引所や国によって価格が異なってくることから、取引所間の送金で、その差益を狙うという方法もあります。
電子マネーやポイントは支払いや送金が用途であるため、基本的に売却ができないことから、投資対象にはなりません。
3つのキャッシュレスのまとめ
最後に3つの決済手段の特徴を振り返ってみましょう。
電子マネーは、決済を前提としたサービスであるため、日常生活で利用するには一番便利なキャッシュレス手段といえます。しかし、一部サービスでは送金や払戻しができないため、使い分ける必要があります。
ポイントサービスは、他のキャッシュレス手段と比べると、その機能がどうしても劣ります。しかし、ポイントを発行する企業側の視点では、資金決済法が適用されないために活用しやすく、今後も流通が活発になるでしょう。
仮想通貨は、送金や投資に向いています。ただ、決済については価格変動や送金速度などの課題があり、普及はまだ先になるでしょう。
それぞれの特徴をしっかり把握。上手にキャッシュレスを利用して、よりよい生活を手に入れましょう。
(ひろぴー)