節分当日に恵方巻が処理工場に
井出さんはヤフーへの投稿で「強調しておきたいのは、法律はゴールではなく、スタートということだ。法律ができたから完璧、というわけでもない」と述べる。本書で報告されているような食品ロスの現実を知っていれば当然の発言だろうと肯いてしまう。
本書の食品ロスのセクション「コンビニ・食品業界編」の冒頭で、廃棄食品を飼料化する工場の様子が描かれる。工場は井出さんから紹介を受けたものだ。著者の一人が訪れたのは昨年2月3日、節分の日の午後だ。その"当日"にもかかわらず、恵方巻の残骸や、その食材がいっぱいになった容器がもう並べられている。工場の関係者によれば、ふだんのご飯ものの2倍という。著者は腐臭などを覚悟して現場に赴いたが、せっかくの覚悟は肩透かしを受ける。まだ食べられるものだからそうした臭いがしないのは当然で、「ロス」を象徴するリポートだ。
とくに恵方巻や、クリスマスケーキなどの季節商品で「ノルマ」に対する悲鳴が店舗やアルバイトらからあがるようになり、コンビニを舞台にして問題が注目された経緯がある。コンビニをめぐる食品ロスの問題は、恵方巻きやケーキなどだけではなく、弁当やおにぎりなど通常の食品にも共通のこと。原因となっているとみられるのは、店舗の仕入れで本部の利益が高まるようなっている「コンビニ会計」や、消費期限にまだ間があっても2~3時間前になるとレジでチェックできなくなる「販売期限」があるという。
コンビニチェーンによっては、指摘されている食品ロス削減を狙い、消費期限が近くなった弁当やおにぎりの購入者にポイント還元の形で実質値引きする方針を打ち出している。