日米で通算134勝を挙げるなどして活躍したプロ野球・巨人の上原浩治投手(44)が、現役引退を表明しました。
上原投手といえば、ボストン・レッドソックスに在籍していた2013年のワールドシリーズで、勝利投手としてマウンドで喜びを爆発させた姿が印象的です。大阪の無名の高校球児から世界一の投手に。米国ファンの心をつかんだのは「あのパフォーマンス」でした。
Ueharaといえば「high five!」
大阪・東海大仰星高では控え投手で、まったくの無名選手だった上原投手。浪人して大阪体育大に入学した後も、前巨人監督の高橋由伸氏といった同世代のスター選手に「負けるものか!」という「雑草魂」が原動力になったと語っています。
上原投手は1998年に巨人に入団。新人王に輝くなど輝かしい成績を収めた後、2008年にフリーエージェント宣言をして、米大リーグのボルチモア・オリオールズへ移籍しました。
大リーグでは4球団を渡り歩いて活躍した上原投手の引退を、海外メディアも速報で報じました。
2013 Red Sox World Series champion retires.
(2013年レッドソックスワールドシリーズのチャンピオンが引退する)
Uehara hanged up his spikes.
(上原投手がスパイクを置く-引退する)
「hang up」は、「電話をきる(受話器を置く)」という意味で使われますが、後ろに「spikes(スパイク)」を加えると「スパイクを置く-野球選手が引退する」という意味になります。
じつは、上原投手の引退を伝える報道では、見慣れない「ある単語」をたくさん目にしました。どうやら上原投手の「代名詞」となっているらしいその単語とは......。
Koji Uehara - the man of high five - has announced his retirement.
(「ハイタッチ男」こと上原浩治投手が引退を表明した)
high five:ハイタッチ
なるほど、「high five」は五本の指を高く上げることから、「ハイタッチ」を意味するのだそうです。
米メディアやファンも、「Uehara」といえばチームメートと「ハイタッチ」をする姿を思い浮かべるのでしょう。満面の笑顔で「ハイタッチ」をする上原投手が観られなくなるのはさみしい限りですが、「ハイタッチ男」として世界中の人の記憶に残るのはすばらしいことではないでしょうか。
ちなみに「雑草魂」で調べたところ、上原投手のことを「雑草魂」「苦労人」などと評している米メディアはありませんでした。アメリカン・ドリームの国で、世界中から雑草たちが集まってくるので、ふつうのことなのかもしれませんね。
元コーチが告白「Ueharaに平手打ち!」
「上原引退」が報道されるやいなや、大リーグ時代のチームメートが次々とメッセージを寄せました。「Uehara」との「今だから言える」エピソードが披露されるなか、元コーチが明かしたこのエピソードが米メディアのヘッドラインを飾りました。
He asked me to slap him in the face.
(彼は僕に「平手打ちしてくれ」と頼んできた)
And I did.
(もちろん、やったよ)
ワールドシリーズを制したセントルイス・カージナルス戦に登板する直前、コーチに「平手打ち」をしてもらってからマウンドに上がったと言うのです。「平手打ち」の成果か、見事に優勝投手になった上原投手ですが、「あのシーズンのUeharaは神がかっていた」と、元同僚がたたえるほど、野球の歴史に名前を刻んだ活躍ぶりでした。
それでは、今週の「ニュースな英語」は、「Uehara」の代名詞でもある「high five」(ハイタッチ)を取り上げます。
まずは、シンプルな言いまわしから。「ハイタッチをする」は、動詞の「do」を使います。
I did a high-five with him.
(彼とハイタッチした)
「because」に続く文章で、「ハイタッチをした理由」を加えてみましょう。
I did a high-five with him because he got a good score.
(いい点を取ってきたので、彼とハイタッチした)
I did a high five with my colleagues.
(同僚とハイタッチした)
I did a high five with my colleagues because our sales went up.
(売り上げがアップしたので、同僚とハイタッチした)
「雑草魂」をむき出しにして闘ってきた上原投手の引退は、個人的にもさみしい限りですが、これまでの活躍に心からの「拍手」を贈りたいと思います。「ハイタッチ」でも「平手打ち」でもなく......。(井津川倫子)