アマゾン、アップルを追え!「伝統的モデル」のトヨタが目指す「プラットフォーマー」とはなにか(気になるビジネス本)

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「自己強化型エコシステム」を形成

   デジタル時代の新ビジネスモデルであるプラットフォーマー以前の、伝統的企業のビジネスモデルは、1980年代に経営戦略の大家、マイケル・ポーターが命名したことで知られる「バリューチェーン」。企業は原材料を購入して加工(インプット)し、製品やサービスを生産して販売(アウトプット)して利益を得る。

   オンライン書店としてスタートしたアマゾンも、新たなOSやパソコンを開発して急成長を遂げたアップルも創業時は伝統モデルだった。

   アップルはその後、市場のリーダーだったマイクロソフト(MS)のソフトウエアと互換性がなく創業20年ほどして破綻の危機に。だがMSとの提携に転じて同社から出資を受けるなどして盛り返す。新製品の開発に乗り出し、iPod、iTunesを投入。パソコンメーカーからの脱皮をさらに進め2007年にiPhoneを発売し、アプリ販売のアップストアを立ち上げプラットフォーマーへの道を探る。

   そして、アプリ開発業者という顧客グループ、iPhoneやiPadなどの利用者である顧客グループを「誘致し、仲介し、結びつけ」両者が取引できるようにすることで大きな価値を生みだしている状況をつくりあげる。しかも、アマゾンもそうだが、アップルは自社でハードウエアを製造しており、このことで製品のデザインと品質を管理しやすくなるという利点がある。エアビーアンドビーやウーバー、ブラブラカーなどの仲介サービス会社ではできない顧客体験への強い関与が可能であり、このことは転身組のプラットフォーマーの大きな利点といえる。

   本書では、アップルやアマゾン、グーグルなども含めて「破壊的プラットフォーマー」と呼ぶ。そして、いずれもが「伝統的なビジネスモデルを掛け合わせることで、強力な「『自己強化型エコシステム』を形成していることもわかった」という。アマゾンは、オークションサイトのイーベイの開放型マーケットプレイスを採用しつつ、そこに自社のデジタル小売モデルを組み合わせ、グーグルは自社開発した製品やサービスで検索プラットフォームを補完し、エコシステムを急成長さていると指摘している。

   本書のプラットフォーマー解説を読み進めるほどに、トヨタがあと何年後かに、世界最大のプラットフォーマーになっているのではないかと思えてくる。

「プラットフォーマー 勝者の法則 コミュニティとネットワークの力を爆発させる方法」
ブノワ・レイエ、ロール・クレア・レイエ著
根来龍之監訳、門脇弘典訳
日本経済新聞出版社
税別2000円

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