就職活動中に「学歴フィルター」を感じたことがある人が4割、また「男女差別」を感じたことがある人が3割いることが、日本労働組合総連合会(連合)が2019年5月15日に発表した「就職差別に関する調査」でわかった。
面接官による「不適切発言」も後を絶たず、「宗教」や「支持政党」を尋ねたり、「恋人いるの?」「太ってるね」などと聞いたりする例が報告されている。
「学歴フィルター」4割、「男女差別」3割が体験
企業が応募者を出身学校名によって振り分け、採用選考の対象とするかどうか決めることは「学歴フィルター」と呼ばれている。たとえば、特定の大学の学生しか説明会(セミナー)に参加できないといったことなどだ。実際に「学歴フィルター」を感じたことがあるかどうか聞くと、40.2%の人が「ある」と回答した。最終学歴別でみると、高校が25.2%、専門学校・短期大学が18.9%だが、四年制大学・大学院では46.4%ともっとも高い。大学・大学院の割合が多いのは、学校名(大学ブランド)が採用に影響していることを示している。
男女差別については、「ある」と感じた人が28.3%いた。どのようなことで差別を感じたかを聞くと(複数回答)、断トツに多いベスト3は「採用予定人数が男女で異なる」(43.8%)、「男女で採用職種が異なる(男性は総合職、女性は一般職など)」(42.4%)、「男性のみ、または女性のみの募集」(39.9%)。また、「男女で制限条件が異なる(婚姻の有無や自宅通勤限定など)」(15.5%)、「男女で年齢制限が異なる」(12.4%)なども目立った。
男女雇用機会均等法によって、労働者の募集や採用にあたっては、性別を理由とする差別は禁止されているが、募集条件が男女差別的だと感じた経験がある人は少なくないようだ。
加えて、差別につながりかねない個人情報の書類の提出を求める企業が多い実態も明らかになった。約5人に1人(19.4%)が戸籍謄(抄)本の提出を求められ、採用決定前に健康診断書の提出を求められた人が半数近く(48.6%)いた。
応募書類やエントリーシートで求められた記入内容を聞くと、「本籍地や出生地」が過半数の56.4%、そのほか「家族構成」(35.9%)や「住居や資産状況」(21.8%)、「自宅付近の略図や居住環境」(19.9%)、「家族の職業・収入」(15.8%)、「尊敬する人物」(12.3%)などの項目が多い。
さらに、「労働組合や市民活動についての見解や加入経験」(7.2%)や「思想信条」(6.5%)、「支持政党」(4.0%)、「宗教」(3.6%)といった、当人の思想を推量できる内容の記入を求められたケースもある。いずれも応募者の適性や能力に関係がない個人情報だが、実際の採用試験では収集が行われている実態が明らかになった。
一方、面接の場で本来質問することは不適切な内容を提示し、実際に聞かれたかどうかを尋ねると、最も多かったのが「転勤できるかどうか」(42.3%)だった。次いで「家族構成」(39.1%)、「残業や休日出勤ができるかどうか」(34.7%)、「本籍地や出生地」(31.6%)、「性別」(18.9%)、「家族の職業・収入」(17.0%)、「婚姻状況(未婚・既婚)」(16.5%)などが続いた。