「そろそろキャリアを目指したい」「一生役立つスキルを身につけたい」――。働く女性の間で「学び直し」の意欲が高まっているという調査がまとまった。
主婦に特化した人材サービス「ビースタイル」の調査機関「しゅふJOB総研」が2019年5月7日に発表した「働く主婦の学び直し意識調査」によると、9割以上の人が「学び直しをしたい」と考えており、実際に7割近くの人が勉強していることがわかった。
人気のツートップはコンピューターと外国語
従来から女性に人気の資格には、保育士や管理栄養士、介護福祉士、マンション管理士、宅地建物取引主任者、簿記、医療事務管理士、秘書技能などがある。また、資格ではないが語学ではTOEICの人気が高い。
最近は、ITパスポートやウェブデザイン技能士など、ITやコンピューター関係の資格をとる女性が増えている。金融やコンサルティング関係の資格も人気となり、ファイナンシャルプラニング技能士にいたっては、まったく同じ名称の資格を国と2つの民間団体の合計3機関が出している状態だ。
調査では、働く女性に「一度社会人になった後に、改めて学校に通い資格取得を目指すなど、学び直しをしたいと思ったことがあるか」を聞くと、92%が「ある」と答えた。その理由(複数回答)で一番多いのが「転職・再就職するため」(72%)で、ついで「教養を深めるため」(51%)だった。また、現在勉強中も含めて、実際に学び直しに取り組んだ経験のある人が66%もいた。
「学び直しをしたい」と答えた人に、「どういう分野に取り組みたいか」を聞くと(複数回答)、「IT・ウエブ・OAなどコンピューターの専門技能取得」(40%)と「外国語の取得」(40%)が同率でトップ、次いで「金融・設計・介護などの専門技術取得」(18%)、「文系分野の教養を深める学問」(9%)と続いた。IT関係と外国語が圧倒的な人気なのだ。
特に、IT関係はスキルアップにもっとも効果的な技能だ。「実際に学び直して仕事に役立ったかどうか」を尋ねると、取り組んだ人の88%が「役立った」と答え、「博士・修士・学士などの学位の取得」(78%)、「MBAなどのビジネスに関する知識・実務訓練」(75%)、「金融・設計・介護」(72%)より高い=図表参照。意外に低かったのが「外国語」(58%)だった。
仕事でネイティブの人を相手に支障なく使いこなすレベルに達するのは難しいということだろうか。
「時間とお金」と「企業の評価」がネック
フリーコメントで、学び直しに取り組んだ人たちの声を見ると、
「現在の仕事で必要なスキルと知識は学校教育ではえられない。学びなおさないと、業務の遂行が難しいと思う」(40代・パート)
「チャンスが広がるので、これからも興味のある分野の知識や技能は学んでいきたい(30代・フリー)
「学び続けることで仕事・人間関係の幅が確実に広がった」(30代・フリー)
と、学んでよかったという人が多い。
一方で、こんな問題点を指摘する声もあった。
「学費だけでなく、授業中に子供を預けるための無認可保育園代もかなりかかった(40代・パート)
「雇用保険の教育訓練給付金をもっと増やしてほしい」(50代・パート)
「せっかく頑張っても学び直すことに対し、企業の評価が追いついていない。企業にとっても有益なのだから、雇用や賃金で報いてほしい(30代・パート)
などだ。
J-CASTニュース会社ウォッチ編集部の取材に対し、「しゅふJOB総研」の川上敬太郎所長は、こう語っている。
「『学び直しをしたい』人が9割以上もいるとは、正直驚きました。もともと働く意欲の強い女性が対象の調査ですが、改めて学びたいという意欲に性別は関係ないと思いました。学び直しの理由として、7割の人が『転職・再就職など新たな仕事に就くため』を挙げています。確かに、実際に学んだ人の多くが『仕事の役に立った』と答えています。
しかし、女性の場合、学び直したいと思っても、なかなか実行に移しづらいのが現状です。コメントを見ても『時間とお金がネック』という声が多く見られました。働く主婦層にもっと時間的ゆとりができるようなサポート、たとえばeラーニングなど時間の融通を利かせながら学べる仕組みや、学び直し費用の補助など、人生100年時代をより豊かに過ごすための社会システムづくりを進める必要があると考えます」
(福田和郎)