就職した会社がなくなってしまう
平成時代には、電機メーカー各社が経営難の嵐に見舞われた。かつては液晶のトップランナーであり、テレビの「亀山モデル」で一世を風靡したシャープだったが、大規模投資があだになり赤字続きで台湾の企業に買収された。その後、短期間でV字回復を果たしたが、それは「日本流とは異なる相当厳しいマネジメントが行われた」ことを意味するものだ。三洋電機は業績悪化からパナソニック(当時は松下電器産業)に友好的に買収されたが、このとき10万人いた社員のうち働き続けられたのは7000人にとどまったという。
また、東芝は不適切な会計処理で屋台骨が揺らぎ、いまだ再生の途中。これまでに、東芝メディカルシステムをキヤノンに、東芝ライフスタイルをマイディアグループに売却するなど3万人以上の削減を実施した
エレクトロニクス系や、金融機関でも買収や合併が繰り返され、近年では製薬業界でその動きが盛んだ。「自身が入社時についた職種から別の職種に変わらされるというのは、日本企業の場合は以前からありうることだった。しかし、自身が入った企業ではない、それも結果的に外資系あるいはファンド傘下で働くことになる、という変化はかつてはなかった」ものだ。
産業界の「平成史」をみれば、終身雇用が「制度疲労」をきたしているのは間違いない。製品やサービスはますます多様化するだろうから、合併や統合、目的に応じた分社など合従連衡が盛んになり、制度として維持していくことは確かに難しそうだ。企業に依存せず暮らせるよう、起業家のように働くことを学んでも損はない。
「起業家のように企業で働く 令和版」
小杉俊哉著
クロスメディア・パブリッシング/インプレス
税別1380円