仁徳天皇陵、世界遺産登録で「観光立国」 うれしいけれど「観光公害」解決しないと!(気になるビジネス本)

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「観光」少子高齢化、日本の基幹産業

   「自分たちの町、地域の遺産をいかに観光のために整備できるか、総括的に考える必要がある。もしくは世界遺産への登録が、本当の意味で観光振興につながるのか。地元の人たちや関係者たちが、それらの問いを吟味した先に、世界遺産登録の本来の意味を生じる。そこを詰めないまま、『世界遺産登録=観光客誘致の切り札』と短絡させるだけでは、物見遊山にやってきて、『失望した』と文句を拡散する人を増やすだけ」

   カー氏のこの意見は、「百舌鳥・古市古墳群」を抱える地域、自治体の観光関係者らに大いに参考になるに違いない。

   カー氏は、少子高齢化が進む日本にとって、将来、国を支える新産業が「観光」だと指摘する。本書執筆時の最新の観光白書によれば、2017年のインバウンド数は2869万人で、その消費額は4兆4162億円。5年前の12年(836万人、1兆846億円)と比べると3.4倍の伸び。こうしたことなどを根拠に、これまでの「ものづくり大国」ばかりでなく、名所やおもてなしをアピールする「もの誇り大国」化を図ろうということだ。

   「しかし日本にとって、基幹産業が重厚長大型から観光のようなサービス型に転換することは、大きなパラダイムシフト」であり、欧米各国と比べると、観光業が観光そのもの盛り上がりに追いついていない。総人口が減少に向かい、その構成が加速度的に変化するなか、観光産業の整備は急務という。本書では、数々の提言が行われていていずれも興味深いが、まずは、的確なコントロール(制限)や適切なマネージメント(管理)、情報発信を行うことが「観光立国」の基礎になる。

「観光亡国論」
アレックス・カー、清野由美著
中央公論新社
税別820円

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