【外国人に聞く!】「外国人労働者の賃金は安くない」 やがて会社はそのことに気づくはず

建築予定地やご希望の地域の工務店へ一括無料資料請求

   「外国人労働者は安い賃金で、よく働いてくれる」――。メディアは、雇い入れている会社側から聞こえてくる、そんな声を伝えている。「外国人労働者は日本人と同じ仕事をしていても、安くこき使われている」という報道も少なくない。

   外国人労働者の、そんな「ブラック」な働き方を排除しようと、政府も日本人との格差是正に乗り出した。外国人労働者の賃金について、日本でインド料理店と旅行代理店を経営するインド人のバット ロマシュさんに聞いた。

  • 外国人と日本人労働者と賃金、格差は是正されるのか?
    外国人と日本人労働者と賃金、格差は是正されるのか?
  • 外国人と日本人労働者と賃金、格差は是正されるのか?

同じ給料を払うなら、日本人のほうが割安

   2019年4月1日、改正出入国管理法が施行されたことに伴い、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた新たな在留資格の「特定技能」が導入された。

   政府は「特定技能」資格で在留する外国人を雇う企業に、外国人に支払う報酬を日本人と同等以上にするよう求めたほか、外国人労働者の健康状態を把握するよう義務付けた。労働法令を順守し、企業の責任で雇用後1年以内に行方不明者が出ていないようにすることなども求めている。

   しかし実際に、外国人に対して「ブラック」な会社は存在する。国土交通省が立ち入り調査などを委託する一般財団法人 国際建設技能振興機構によると、建設業者で2017年度に立ち入り調査を受けた518社のうち、じつに約4割にあたる204社で、賃金問題があったとされる。

   約束した手当の未払いや割増賃金の算定ミスといった「時間外・休日・深夜割増賃金の支払い」が140件、住居費などを過大に控除するなどの「賃金支払いの状況」が137件と、突出して多かった。複数の指摘を受けた会社もあったという。

   経営者の立場からみて、日本人と外国人がいっしょに働いている職場では、やはり外国人労働者の賃金は低いのだろうか――。

   「外国人労働者の賃金は、安くないですよ。世界基準でみても、そもそも日本で支払われている給料が安いと思います」と、バットさんは言う。たとえば、プログラマーやエンジニアなどは、米国や欧州の水準と比べて、かなり低いそうだ。

「言葉という高いハードルがある日本で、欧米で通用する高いレベルのスキルを持つ、優秀な外国人を招こうと思えば、おのずとお金がかかりますよね。安い給料では来てくれませんから。
   一方、いま日本が求めている外国人労働者はある程度のスキルでも通用する人ですよね。でも、こちらも本来であれば、かなりのコストがかかるんですよ。ある程度の外国人をわざわざ連れてきて、なおかつ彼らのスキルアップや、家や生活の面倒などの福利厚生をしっかりやって、組織をつくり上げるためには、想像以上のコストがかかるはずです。同じ水準の給料を払うのであれば、絶対、日本人を雇ったほうが割安ですよ」

日本人の作業を、外国人に置き換えてもコストは下がらない

   インド料理店を経営するバットさんは、こんな経験をしている。

「うちで働くインド人シェフが、他の飲食店からよくヘッドハンティングされるんです。でも、必ず3か月で戻ってくるんですよ。それはなぜか。額面の給料だけを考えて引き抜くことが多いからなんです。たとえば18万円の給料を払っていて、それに住む家を提供して、食事を提供して、なおかつ彼らのメディカルケアとかも手当する。そのすべてを会社が背負っているわけです。そういった負担を考慮しないで引き抜いていくんですよね。
   一回雇ってみないとわからないみたいですよ、そうことが。だから、外国人労働者を雇うことによって賃金が割安になるという考え方は、すぐになくなると思います。計画的に、組織的に進めていかないと割安にはなりません」
「外国人の雇用は組織的に進めていかないと割安にはなりません」と、バットさんは言う
「外国人の雇用は組織的に進めていかないと割安にはなりません」と、バットさんは言う

   つまり、単純に日本人一人の作業を、外国人一人に置き換えることではコストは下がらない。むしろ、言葉も伝わらないし、仕事が疎かになったり、商品が劣化したりしてくるので、外国人労働者を雇う意味すらなくなるわけだ。

   「たとえば、工場で服を作る外国人を大量に集めてきて仕事をさせるなど、スケールメリットをつくり出すことですね。20、30人をまとめて雇って、地方の生活コストが安いところに住み、そこを管理者一人に任せて......。そんな感じで運営すれば、成り立っていくと思います」と、バットさんは話す。

外国人労働者は集団就職の「金の卵」か!?

   そうなると上場企業などの、それなりの規模をもつ会社でないと外国人労働者は「雇えない」「雇っても意味がない」「雇いきれない」ことにならないか――。

   バット ロマシュさんは、

「たとえば通訳や、食事や生活の面倒などを見てくれる外国人を一人雇わないといけないですね。それでも一人の外国人労働者を日本での仕事や生活に慣れさせるのに2年かかって、次にその人が新しく来た人の面倒を見るとか、そんなスケジュールというか、タイムラインで見ていかないと難しいでしょう。
   中小規模の会社では、無理ではありませんが、そういったことをきちんと考えないと、日本に連れてきたはいいけど、結局定着しなかったということになりかねません」

と、手厳しい。

   外国人と日本人労働者の賃金格差をなくすための策として、外国人労働者の賃金レベルを引き上げるのではなく、高い賃金の日本人の給料を引き下げて解決しようとする、「ブラック企業」が出てきたとの情報もある。

   人件費は抑えたい.でも、人手不足は解消したい。会社経営者の頭痛は続く。

姉妹サイト