過去の著作「仕事の9割は世間話」では、お客様や取引先、発注先といった「社外」の人とのコミュニケーションにおいて、人間関係が構築できていない時には「仲良くなるために、まずは雑談をしましょう」と書かせていただきました。
では、社内ではどうでしょう――。たとえば、同じ職場の同僚と部下だったり、同じ職場だけど部署の違う人同士だったり、コミュニケーションをとる際に、「結論から話してほしい」とか、「本題から入ろう」「数字だけ教えてくれる?」といった本質的な回答をストレートに求められることがあります。
しかし、社内においても社外と同じように「アイスブレイク」(初対面の人同士が緊張を解き、リラックスしてもらうための手法。集まった人を和ませてコミュニケーションをとりやすい雰囲気をつくること)が必要なのではないでしょうか。
物事、結論の前には必ず背景がある
同じ職場で一緒にいる時間が長いからといって、相手のことをよくわかっていると思うのは大間違いです。単に、同じ空間にいるだけの間柄と割り切ったほうがいいでしょう。
実際、私が取材したゲーム系会社のクリエーターたちは、隣同士で座っていても「おはよう」の挨拶すら交わしていませんでした。
出社したら自分の席にサッと座り、パソコンの電源をつけて、自分の仕事をチャッチャと済ませて帰ってしまう。隣の人に声を掛けようにも、相手も集中して作業をしているし、イヤフォンをつけているケースもあります。
つまり、「声をかけない」というのも配慮のうちなのです。用があれば、相手がすぐ隣にいようともメールで済ませるという人も、今では多いと思います。
このように現代では、同じ会社だからといって、お互いに円滑なコミュニケーションができるとは限らない状況がよく見られるようになってきました。
そんな中で、いきなり本題から入って得することは何もないと思います。
物事というのは結論の前に必ず背景があり、お互いが納得して前に進んでいくものです。そこでいきなり相手に「イエス」か「ノー」かを選択させる、コミュニケーションの手法でいえば「クローズド・クエスチョン(回答を限定した質問)」を突きつけるとどうなるか――。
一番怖いのは「本当はそう思っていないのに『イエス』と言わされた」、あるいは「上手に話せない状況を作らされて、本質的なことを話せなかった」などと、相手に不快な思いをさせてしまうことです。