「3.11」の大災害から8年目の年を迎えました。被災地の課題はまだまだ多いものの、災害当時のことを客観的に振り返る余裕も少しずつ出てきました。今の福島からは、そういう印象を受けます。
そのようななか、今、研究者や住民の方のあいだでにわかに議論を呼んでいる問題があります。それは、「震災当時の個人情報収集の仕方が適切であったのか」という点です。
個人情報保護法の改正で起こった変化
特に、当時の健康情報につき、共有の仕方が適切であったのかという話題が、住民の方々や自治体の職員の間でも取りざたされるようになってきたようです。
今になり、そのようなことが話題になった背景には、情報収集を行った自治体の方針が変更された、研究施設の方針や人事が変更された、患者さんや住民の方々が改めて過去を振り返る余裕ができたなど、さまざまな理由があるでしょう。
また、2017年に個人情報保護法が改訂されたことで、情報に対する取り扱いのルールが変わったということも一因となっているかもしれません。
将来の災害に備え、当時の混乱の中の手続きに甘さがなかったのか、しっかり見直すことは重要です。しかし、「誰が何を反省すべきなのか」という点については、さまざまな論点があるにもかかわらず、きちんと分類がされないまま、徒に研究者が批判される場面も時折見かけます。
もちろん、このような批判が起こったことについては、研究者側にも反省すべき点があります。これまで研究者は、患者さんや住民の方に調査や研究の説明を行う際、研究内容の説明は丁重に行ってきました。
しかし、自分たちがどのようなルールに則って手続きを踏んでいるのかということについては、あまり説明してこなかったように思います。その結果、患者さんのカラダに影響を与えることのない観察研究のような研究においても「法に触れている」「倫理的に誤っている」という疑念を抱かせてしまい、まるで患者さんに直接の害をもたらしたかのような印象を患者さんが持ってしまう結果になっているのではないでしょうか。
そこで本稿を含む数稿を使って、災害時の情報につき、その収集の難しさ、住民の方の不満の原因、倫理的な問題など、いくつかの視点から考察していこうと思います。