中小より規模が小さい「大手私鉄」が存在! そのワケは輸送密度の濃さにあり(気になるビジネス本)

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「座れる通勤電車」出そろい「令和」始まる

   JRを含めて鉄道界では近年、サービスの向上と収入アップを狙った「座れる通勤電車」の導入が盛ん。関東の大手私鉄8社では、平成のフィナーレを控えた30年(2018年)末までに、路線距離が短い相鉄(相模鉄道)を除く7社で、通勤時間帯の有料特急など着席サービス列車や車両の配備が行われているという。

   「座れる通勤電車」のパイオニアは、じつは昭和の時代の小田急電鉄。昭和42年(1967年)夏から、定期券で乗車できるようになった。これが通勤客のあいだで大ヒットとなり、増発が重ねられ、その後に他社が「○○ライナー」などと名付けた通勤客向け車両の運行を始める呼び水となった。小田急では2018年に複々線化が完成したのを受けて、一層の増強を行っている。

   8社のうち唯一、座れるサービスを持たない相鉄だが、その理由の一つは旅客営業キロメートルが短いこと。その距離は35.9キロで、トップの東武鉄道(463.3キロ)の約8%にも満たない。埼玉・秩父鉄道(71.7キロ)や茨城・関東鉄道(55.6キロ)など、関東の中小私鉄をも下回るミニサイズなのだが、なぜ大手私鉄に数えられるのか。

   営業距離で相鉄のワンランク上、7位の京王電鉄の距離は84.7キロメートルあり、相鉄は「番外地的最下位」。規模の小ささから年間の輸送人員も最下位で、2017年度の実績は23万1738人だった。輸送人員ランキングの相鉄のワンランク上の7位は京成電鉄で、その実績は28万6929人。京成の営業距離は相鉄の約4.2倍の152.3キロで、両社の営業距離に対する輸送人員の割合を比べると、いかに相鉄の輸送密度の濃さがわかろうというもの。輸送密度だと、相鉄は5位に躍進。一方、路線規模で関東では頭抜けて1位の東武は7位に後退する。

   ちなみに、これは東武が路線を展開する栃木や群馬など北関東で利用者が少ないためだ。

   本書はほかにも、こうした詳しいデータを用いて私鉄各社を比べていて、さまざまな報告が楽しめる。時間帯別の混雑状況、車両の居住性などの情報を交えたレポートや、沿線の踏切数、駅売店のコンビニ化の様子などはとくに、これから首都圏の私鉄沿線に住むことを考えている人にとっては大いに参考になるはず。

「関東の私鉄格差」
小佐野カゲトシ著
河出書房新社
税別720円

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