インド人のバット ロマシュさんは現在、日本でインド料理店と旅行代理店を経営する。幼い頃から日本で暮らしていたため、大学卒業時には、日本人と同じように就職活動をして日本の会社に入った。
バットさんに外国人学生の就職活動と、今回の外国人労働者の受け入れ拡大について、話を聞いた。
外国人学生には特別な就活ルートがある
バットさんは、父が日本の大手旅行代理店の下請けとして、インドや周辺国の旅行サービス手配業を営むようになり、2歳から大阪で暮らすようになった。
6歳で東京に移り、インターナショナルスクールに入学。小中高と英語で学び、上智大学へ。卒業後、大手広告代理店に入社した。日本語に堪能。通訳なしで会話できる。「日本人と同じように就職活動に励んでいましたから、外国人労働者といってもボクは珍しいタイプかもしれませんね」と話す。
「就職活動はめちゃくちゃしました。100社以上は受けましたね。就職活動はいろいろなところの情報を聞けるので楽しかったです」と、バットさん。日本語が話せることもあり、「外国人だから」と敬遠されたり、特別視されたりした覚えはない。数多くの会社を訪問したが、苦痛ではなかったという。
外国人学生の「就活」ルートには、特別なフォーラムがある。
「有名なのは、ボストンキャリアフォーラムですね。そこは一日で最終面談まで行けるようなプロセスがあるんです。そういうフォーラムがいくつかあり、ボストンや東京で、年に1回か2回くらい。外国人材を採用するために日本の大手企業などが面談に出かけるんです。なので、たとえばボクが入社した博報堂でも、おそらく3、4人の同期がフォーラムから入社していたと思います」。
「外国人」を数合わせに使うようでは立ち行かなくなる
そんなバットさんは、4月からの外国人労働者の受け入れ拡大について、「農業とか、建設業とか。日本人がその業種に就かないから、外国人で埋めちゃおうという印象がありますよね」と話す。
ただ、現実にはすでに少なくない外国人労働者が、さまざまな職場で働いている。
ひと口に外国人労働者といっても、日本在住の外国人と海外から働きに来る外国人。また海外から働きに来る外国人の中でも、医師や教授、研究員などの専門職と、そうでない人たちとがいる。「本来はそれを、十把一絡げにはできない」と、バットさんは言う。
「ボクの場合は日本に住む外国人として、日本人と同じ土俵で就活していましたし、日本人と同じ採用基準で受かればいいと思っていました。それでも、『そもそも日本人だったらこのレベルでは受からないよなぁ』っていう仕事が、現実にはあることも感じていました。
会社側は『この外国人は、この部署で、こういう場面で使おう』と、適材適所を考えて採用していると思うんです。『外国人だから』ではなく、そこも日本人を採用するのと同じようにです。
受け入れ拡大のポイントは、そこにあるのではないかと思います。そうであれば、会社はよりレベルが高い外国人に働いてもらおうと考えるようになるでしょうし、単なる数合わせのような、場当たり的な採用では立ち行かなくなるのだと思います」
バットさんに、こんな質問をしてみた。
友人や親戚を日本に呼びよせたい、日本で一緒に働きたいと思いますか――。
「その人に見合う仕事があれば、声をかけてもいいかな。でも、今のままでは、積極的に『日本で働こう』とは、なかなか言いづらいですよ」