【投資の着眼点】勝てるトレーダーは「忘れっぽい」? 機械のように取引できますか

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   かつて、機関投資家のトレーダーとして働いた経験があるという男性に、トレードについて質問する機会に恵まれた。

   今から30年近く前に大学を卒業して東京都内のある証券会社に入社した、その男性は、当時はトレードとは無縁な立場だった。しかし、入社から数年後に運用部門が新設された際に配置転換され、株式の売買で会社の資金を運用することになったという。その男性の勤務先に関する情報を、ここに記すことはできないのが残念だが、その男性への質問とそれに対する答えのいくつかを紹介したい。

  • 勝てるトレーダーに必要なことは……
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取引中に怖くなることはないのか

   まず、筆者自身の取引経験に基づく、株式投資の際に抱く感情について質問した。

   トレードするとき、筆者は損したトレードではほとんど何も感じない。だが、利益となるトレードをしたときや、「怖くなって途中で決済してしまったが、我慢して保有し続ければ、相当の利益を得ることができたはずのトレード」をしたとき、取引中はたいてい、ただならぬ恐怖を感じている。会社の資金を任されて運用する身としては、どのように感じていたのか――。

   男性の答えは、こうだった。

「それはトレーダーによって異なるね。君がそう感じているなら、その感情が経験にもとづいた『勘』となるのだろう。君とは反対に、うまく取引が進んでいるときは何も感じないが、損失を出しそうなときに恐怖を感じるトレーダーもいる」

   その男性は若くして結婚したこともあり、筆者とそれほど年齢が変わらない子どもがいるという。そのためか、質問に答える口調はまるで父親として話しかけてくるような雰囲気があった。

(中見出し)優秀なトレーダーは一人で200億円を株式運用

   次に、どのような手法を用いて株式を取引していたのか、聞いてみた。

   「順張りの手法か、逆張り手法か」聞いてみると、彼が使っていた手法は「順張り」だった。企業秘密につながる話のため、それ以上のことを聞くことができなかったのは残念だったが、彼の手法というよりは、会社の方針だそうである。

   勤務先の証券会社が新人のトレーダーに求める適性は、

「長期的には期待値がプラスとなることがわかっている手法を、たまたま今月は負けが続いているといって投げ出さず、システム的に一貫して取引を続けることのできる人」

   という。

   会社の資金を預かって運用しているトレーダーの給料についても聞いてみた。

   資金を任されて運用するトレーダーの給与は、年功序列ではなく成果給である。なかには、新卒で入社して20代のうちに年収5000万円を超えるような凄腕のトレーダーもいる、とその男性はいう。

「うちの場合、それぞれの社員に対して、月ごとにトレードで上げた利益から諸経費として50万円から100万円を差し引き、正社員の場合はそれに最大45%をかけた(乗じた)ものが、トレーダーの月額の給料になっているよ。月間の給料には上限があるけど、上限を超えてしまって払いきれなかった分は、半年に1回のボーナスでまとめて払ってくれるね」

   ちなみに、彼の勤務先でもっとも優秀なトレーダーは、一人で200億円もの資金を株式で運用しているという。

(中見出し)勝てる投資家の「条件」は「謙虚」「柔軟」そして......

   個人投資家とは違い、機関投資家で働く社員は毎年、一定の成績を上げなければクビになることがある。機関投資家の世界は、標準的なサラリーマンの給与水準では考えられないような高収入を得ることができる可能性がある一方で、容赦ない実力社会であることも事実だ。

   いったい、どのような人がそうした環境で長年にわたり勝ち残ることができるのだろうか。

「まずは、謙虚な人。自分の過去の栄光を、『あくまでも昔の話』と割り切れる人。そして、相場の変化に柔軟な人。極端な話、前場で通用した値動きの法則性が、後場には通用しなくなっているような状況でも、なんの迷いもなく受け入れることができる人」

   数多くの投資の格言にあるように、投資の世界で成功するために必要なマインドセットは、日常生活で求められる価値観とは矛盾するものが数多くある。ときには、人間的な防衛本能すら振り払う必要もあるだろう。投資のプロの世界を垣間見ることができたような、そんな気がしたのだった。(ブラックスワン)

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