ふるさと納税に頼った行政サービスでいいの?
それでも過度な返礼品競争は収まらなかったことから、総務省は(1)返礼品の返礼割合を納税額の3割以下とすること(2)返礼品を地場産品とすること―― を満たす自治体を、ふるさと納税の特例控除が受けられる対象に指定することを決め、2019年6月1日以降のふるさと納税による寄付金に適用することにした。
つまり、前述の福岡県直方市の例は、返礼割合が納税額の3割以上で、地場産品ではない返礼品を送ることができる新制度スタート前の駆け込みだったわけだ。直方市に限らず、駆け込み返礼品を用意している自治体は多い。また泉佐野市の八島副市長と同様に、新制度を批判する自治体も多い。
返礼品を地場産品としたものの、地場産品に魅力的なものがない場合、
「ふるさと納税が集まらなくなる」
「魅力的な地場産品がある自治体と、ない自治体では競争条件に不公平が生まれる」
といった自治体関係者の声は多い。
「ふるさと納税額が減ることで、行政サービスが低下する可能性がある」
と指摘する声もある。
2017年度のふるさと納税額は3653億円で、2018年度にふるさと納税で控除された税金額は2448億円となっている。
確かに、ふるさと納税によって自治体予算が大幅に増加し、それが地域の行政サービスの原資となっている自治体が存在している。これらの自治体にとっては、ふるさと納税の新制度によって寄付金が減少することは死活問題になるかもしれない。
しかし、ふるさと納税に頼った行政サービスのあり方は、不自然で不安定なものであることに変わりはない。地場産品に偏らずにふるさと納税制度を活かす制度、ふるさと納税によって集まった寄付金を分配する制度といった「新たなふるさと納税」の考え方を検討するべきではないか。(鷲尾香一)