【10連休は本を読む】「アマゾン」をGAFAの一角に押し上げた問題解決法(気になるビジネス本)

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「すべてテクノロジーに置き換える」スタンス

   アマゾンの問題解決のアプローチの拠り所になっているのは創業者、ジェフ・ベゾス氏の考え方や言葉だ。ベゾス氏は、GAFAの他の企業の創業者と同じく電気工学などを学んだエンジニア。実業家のプロフィールも共通だが、ベゾス氏が社会に出てから選んだのは金融業界で、ひとり別の道を進んだ格好だ。金融サービス会社で資産運用に携わり、ヘッジファンドでマネジャーなどを務めたのちにアマゾンを創業。その過程で学んだことをアマゾンの運営に生かすことで成長を加速化させたものだ。

   ベゾス氏の言葉の代表的なものの一つに「『善意』は働かない。働くのは『仕組み』だ」というのがあり、佐藤さんら社員にしばしば語っていたという。その意味は「『善意』だけで、社員は働き続けられない。『仕組み』の土台の上で、社員の『善意』が発揮される」ことだと社員らは理解している。顧客体験を快適なものとするためには社員の善意が欠かせないが、その機能のためには仕組みがなければならない。著者によれば、仕組みを充実させることはIT化と同義であり、このことが原動力の一部となってアマゾンを有数のIT企業に押し上げた。

   「仕組み化の際、有効活用したいのはテクノロジー。コンピュータは基本的に言われたことしかできないが、ときとして人間が犯しがちなケアレスミスを防ぐ。アマゾンは創業当初から『テクノロジーに置き換えられるものはすべて置き換える』というスタンスで改善を進めている。アメリカのアマゾンの倉庫はその主要プロセスをロボットが担うようになったが、これも当然の考え方」と佐藤さん。「すべてテクノロジーに置き換える」スタンスはまた、他のIT企業と比べて、より近い距離で顧客を相手にするビジネスを営んでいるからでもある。「『私たちが手間暇かけたからといって、その手間暇にお客様はお金を払いたいわけではないでしょう?』という考え方があるから」という。これらがアマゾンの「本質的問題解決思考」というものだろう

   もちろんIT関連ばかりでなく、人材育成の不調、社内モンスターの存在、離職率の上昇、世代間での価値観差、進まぬ働き方改革など、企業が抱えているとみられるさまざまな問題についてアマゾン流の解決方法を提示している。それらのベースになっているのもベゾス氏の考え方だ。

   評者はパソコンで数日前、アマゾンのロゴ入りではあるが、詐欺とすぐ分かるメールを受け取った。アマゾンはしばしば利用することだし、重ねて送られてきて事故の元になりかねないから、アマゾンに知らせておこうと、その窓口をさがしたのだがなかなか見つからない。結局は、しばらく捜索したのちメールを送ることはできたのだが、このあたりもテクノロジーに置き換えてもらって窓口がすぐ見つかる客としての体験はグンと向上するに違いない。

『アマゾンのすごい問題解決』
佐藤将之著
宝島社
税別1500円

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