3大会でパラ中継を担当
観察眼鋭く駅伝をモニターして、一般に知られていなかった見どころ、ドラマを掘り起こし、それを周到な準備を重ねて、魅力的な番組に仕上げた田中さん。巨人戦の中継を担当したときには、日テレだから巨人中心などということはなく、次の対戦チームに中継担当のアナウンサーを帯同させるなどして放送内容の充実に腐心。このことが生きて、巨人がサヨナラ勝ちした試合で、日本テレビのカメラだけが、その打者を打ち取ればある記録を達成するところだった相手投手がグラブを投げつけ悔しがるシーンをとらえたことがあった。番組ディレクターが投手の性格を把握しており、だれもがサヨナラ打の巨人選手に注目するなか、その投手から狙いをはずさず"スクープ"をものにした。
「準備せよ」と自分にも言い聞かせている田中さん。スカパー!時代には、08年の北京、12年のロンドン、14年のソチでパラリンピックの中継に携わった。オリンピックとは異なり、ストーリー重視で伝えると視聴者にとってスポーツ中継というよりドキュメンタリーに近づいてしまうため、アスリートの部分をとらえるようにしたという。20年の東京では、パラリンピックは22競技539種目が予定され、ほとんどの競技が初めて放送される。オリンピックともどもその準備もすでに始まっている。田中さんはまた、世界陸上など国際大会で尽くした準備についても本書で詳しく述べているのだが、そのあたりを読むと、東京オリパラに合わせて節約したうえ高解像度の大型テレビを買ってみるかと考えてしまう。
『準備せよ。スポーツ中継のフィロソフィー』
田中晃/WOWOWスポーツ塾・編
文藝春秋
税別1500円
2019年03月22日