「仕事のことは教えても、生活のことは面倒見ない」
こんなトラブルもある。外国人材を仲介する、ある人材派遣業者によると「東京都内での研修後、地方の工場に派遣する外国人労働者のうち、何人かは1週間ももたない」と、明かす。
「東京があまりに便利なため、地方での住まいと工場の往復だけの暮らしがイヤになってしまうんですね。なかには逃げ出していなくなってしまう外国人労働者もいる。もちろん、放っておけないので、連れ戻しに出かけなければなりませんし、そのコストはバカになりません」(人材派遣業者)
バット ロマシュさんは、「働くということは、そこで暮らすことです。生活習慣はもちろん、文化や習慣の違いは日本人と外国人とでは雲泥の差があります。ここが一番の問題。外国人労働者の場合、数人で一緒に暮らしていることが多いのですが、ポンと連れて来られて『はい、ここでやってよ』って放り出されちゃう。仕事のことはきちんと教えても、生活のことは済む場所さえあればいい、あとは知らないっていう感じです」という。
門戸は広げたものの、現実の日本社会は外国人労働者に、さほど寛容ではない。
法務省が2019年3月22日に発表した「平成30(2018)年末現在の在留外国人数」で、都道府県別の在留外国人数をみると、最多は東京都の56万7789人で、前年末と比べて5.6%、3万287人増えた。全国の20.8%を占める。
次いで、愛知県の26万0952人 (前年末比7.4%増)、大阪府の23万9113人(4.7%増)、 神奈川県の21万8946人 (7.1%増)、埼玉県の18万762人(8.1%増)と続く。
バットさんは、東京・西葛西に住んでいる。ここ西葛西は「インド人街」が形成されるほど、インド人が多く住む町。このほか、自動車工場が集積する群馬県太田市のブラジル人街や、埼玉県川口市の中国人街などが有名だが、こうした「コミュニティ」が必要と、バットさんは指摘する。
「セーフティーネットという意味でのコミュニティが必要で、ここを行政や企業が主体的に進めてもらえれば、定住する外国人労働者も出てくると思いますよ」