【寄稿 令和の時代に】元号は企業で役立つか 「名は体を表す」喩え「令和」時代の生き方(後編)

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「令和」時代は多民族共創の「万葉社会」を暗示する

   帝京平成大学はその後、福祉情報学科、メディカル学部、臨床心理センター、薬学部、ヒューマンケア学部と、人間を中央に置いた大学へと変貌していった。同大学の総務部によれば、「『平成』名が表す、さまざまな分野で活躍できる『実践能力』のある人材育成と、建学の精神である『実学の精神』との合致を求めた結果である」とコメントしている。

   つまり、元号は名前にあやかるのではなく、その意味を自社の理念と対照することで企業の価値を高めることができる。

   結果として「平成」は、その名の示すとおり、一度も戦争のない平和な時代であった。元号策定に当たっては、精査された時代考証のためか、いつの時代でも「名は体を表す」喩えのように関連付けてきた例が多い。

   とはいえ、その時代の性格特性が共有されるのは、だいぶ経ってからである。たとえば昭和は、善し悪しはあったものの、米国指向で伸びた外交型の時代。大正は、大正ロマンと呼ばれるように内政型の文化が育まれた時代。明治は舶来に象徴されるように欧州の科学、経済が流入してきた外交型時代と、外交、内政が交互に開花している点に興味を惹かれる。

   その順でいえば平成は、昭和がひと休みした内政型と云えるかどうかは時間をおいて明らかになる。

   その一方で、新元号の「令和」で、注目されるのは出典の万葉集である。万葉集はその名のとおり万の歌集であるが、歌人は貧富、身分を問わず、多くの個性を尊重した歌集である。今後の日本は経済・文化共に、ある国集中の外交から新興国を含む多民族共創の社会になろうとしている。

   まさに、万葉社会を暗示していると感じる。(田村新吾)


プロフィール

田村 新吾(たむら・しんご)

(株)ワンダーワークス代表取締役、日本創造学会理事長
早稲田大学理工学部卒業後、ソニーに入社、音響機器開発、CD--ROM開発、二足歩行ロボット開発に従事。パソコン系事業部長、社内横断型企画マンの育成。その後、北海道大学、慶應義塾大学、早稲田大学の講師、企業顧問約30社を歴任。
著書に「二宮尊徳と創造経営」(カナリヤコミュニケーションズ)、「実践的MOTのススメ」(慶應義塾大学出版会)がある。

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