その84 選挙カーからの「候補者名」と「お願い」の連呼 「こんなものいらない!?」(岩城元)

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   前回の「その83」では、2019年4月の統一地方選挙の候補者の多くが姓名の一部あるいは全部を、ポスターでは便宜的に平仮名にしていることに疑問を呈した。

   今回、もうひとつ言いたいことがある。走り回る選挙カーからの「候補者名」と「お願い」の連呼についてである。

  • 東京・新橋のSLの横に貼られた港区議会議員選挙のポスター。
    東京・新橋のSLの横に貼られた港区議会議員選挙のポスター。
  • 東京・新橋のSLの横に貼られた港区議会議員選挙のポスター。

連呼は午前8時から午後8時まで

   僕の名前を使って再現すると、「岩城元、岩城元がごあいさつに参りました。21日の投票日には岩城元に清き一票を何卒よろしくお願い申し上げます」「最後のお願いです。岩城元は当選まであと一歩です。どうか皆様......」「最後の、最後のお願いです......」といったところだ。

   候補者名の前に「福祉のスペシャリスト」「若さと実行力」などといったキャッチコピーがついたりもするが、結局は「候補者名」と「お願い」の繰り返しである。

   そして、公職選挙法ではこうした連呼が、午前8時から午後8時の、12時間に限って認められている。クルマではなく船舶の上からでも構わない。

   僕は選挙期間中、拡声器を使った街頭演説で周りがやかましくなるのは仕方のないことだと思っている。有権者としては、少しくらいの騒々しさは我慢して、候補者の政見に耳を傾けるべきだろう。

   しかし、「候補者名」と「お願い」だけの連呼はどうも感心しない。騒音だけが耳について、うんざりさせられる。「この人だけには投票しないぞ」といった気持ちにもなってくる。

「候補者」と「お願い」の連呼がのさばる時代ではない

   新聞を広げていたら、「お願い戦術の議員はいらない」との投書が目についた。つまり、自分たちの代表を選んで政治のかじ取りを託すのだから、こちらこそが候補者にお願いしたいのであって、お願いされては立場が逆である。その自覚もなく、票をねだるのは論外だというのだ。

   また、選挙の結果が出た後がスタートなのに、投票前日に「最後のお願い」を連呼する候補者は当選をゴールと考えて、議員バッジや報酬だけを目的にしているのではないか。投書はそのようにも憤っていた。僕も同感である。

   2013年4月の公職選挙法の改正により、今では国政選挙、地方選挙においてインターネットを使った選挙運動ができるようになった。候補者は電子メールやウェブサイトなどを利用して、有権者に政見を述べ、投票を呼びかけることができる。

   もはや、単純な連呼がのさばる時代ではない。この夏の参議院議員選挙あたりからは、旧態依然の選挙戦術から抜け出してほしい。(岩城元)

岩城 元(いわき・はじむ)
岩城 元(いわき・はじむ)
1940年大阪府生まれ。京都大学卒業後、1963年から2000年まで朝日新聞社勤務。主として経済記者。2001年から14年まで中国に滞在。ハルビン理工大学、広西師範大学や、自分でつくった塾で日本語を教える。現在、無職。唯一の肩書は「一般社団法人 健康・長寿国際交流協会 理事」
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