消費増税撤回、衆参同時選挙が可能なワケ
トランプ大統領の大規模な財政支出を批判したサマーズ氏がこのような結論に至ったというのは興味深いのですが、日本のように実質マイナス金利が続く世界では財政赤字は心配する必要はないのです。
つまり、「名目成長率>国債金利」であれば、財政赤字は発散することなく、次第に改善します。
2016年に日本銀行が採用したYCC(イールドカーブコントロール)はすごい政策で、政府はゼロ金利でファイナンスできます。日本の名目成長率は現状1.5%程度あるので、このままの状態が続くと次第に財政赤字は改善され、数年後に日本はプライマリーバランスを回復します。
要するに、増税する必要はないのです。問題は現在の日本の幸運である「名目成長率>国債金利」がいつまで続けることができるのかという点ですが、すでに3年続いています。
サマーズ氏のようなバリバリの主流派経済学者の結論として、一定の財政赤字が必要と結論されると、首相周辺も動くでしょう。個人的にも、消費増税は撤回されて、衆参同時選挙というシナリオが濃厚と思います。
では、消費増税が撤回されたらどうなるのでしょうか。日本の景気には間違いなく好影響です。財政赤字が増えるので、金利マーケットは若干反応するかもしれませんが、金利上昇を待ち望んでいる銀行のJGB(日本国債)買いで、あっという間にゼロ金利に戻るでしょう。
為替レートへの影響ですが、現状でも財政ファイナンスという状況です。普通であれば、円安になるのですが、さまざまなマクロ要因から動かなくなっています。ただ、消費税増税が撤回され、日銀のJGB(日本国債)購入が増えると、日本が財政ファイナンスしているという状況がはっきりするので、円安に進み安くなるはずです。
一方、予定どおり消費増税となれば、やはり景気を冷やすので、株価の下落を通じて円高要因となるでしょう。(志摩力男)