SDGs(持続可能な開発目標=Sustainable Development Goals)にある「17の目標」には、平和や貧困、地球環境などのキーワードがあるが、それらの目標はそれぞれが連携していて、そのことがSDGsをわかりづらくしているようだ。
「2019年はSDGs元年」という、企業のSDGsの取り組み促進を提唱する伊藤園顧問の笹谷秀光氏とSDGsへの理解を深めながら企業の役割を確認する。
「5つのP」は連携している
―― 「17の目標」にある「5つのP」が、それぞれ連携しているようです。
笹谷秀光氏「ええ。じつはSDGsの前に、『MDGs(Millennium Development Goals)がありました。これは2000年から2015年まで。発展途上国に目線を当てて先進国が応援するようなイメージだったのですが、SDGsを議論しているときに先進国も途上国も同様の課題があることに気づいたのです。そのため、二つ目の『P』である『Prosperity』という概念を取り入れることになりました。人類の繁栄の必須要素として、まずはエネルギー問題があります。これが、2番目の『P』の1番と7番の目標です。
たとえば、世界には電気のない、無電化地帯がまだあって、これがなかなか深刻なんですね。パナソニックは『ソーラーランタン 10万台プロジェクト』といって、ソーラーパネルにLEDライトをつけたランタンを作って発展途上国に支給しました。無電化地帯を応援する素晴らしいプロジェクトです。
その一方で、日本のような先進国では電源の安定、ブラックアウトがあっていけないので、今後の電源をどう確保していくのかというテーマがあります。これは再生可能エネルギーへの転換問題に当たります」
―― 日本の「働き方改革」にあたる目標も含まれていますね。
笹谷氏「8番目に、『働き方』があります。働き甲斐のある職場づくり。これは日本では話題の『働き方改革』のこと。かつての奴隷制度のような、人間らしくない、人を人として扱わない働き方は許さないということですね。それで昨今のブラック企業は許さないという流れが起こっているわけです。
また、ここが大事なんですが、技術力と産業革新があります。これはイノベーションと創造性がないと難しい課題の解決ができない、このあたりが企業の力がなくしては成し得ないところです。SDGSは、企業が力を発揮してほしい、本業の力でいろんな社会課題を解決してほしいのです。たとえば人工知能(AI)とか、ロボットとか、IoT(モノのインターネット)であるとか、最新技術、また医療技術、それからインフラの整備と、あらゆることに企業の本業の力に期待しています。それを課題解決につなげていくのです。
それで解決すると、10番の世の中の不平等も撲滅されていくだろうと。11番に、『住み続けられる街づくり』がありますが、技術力を街づくりに応用しますと、みなさんの住んでいる町が持続可能になるわけです。これらが『繁栄』という視点で考えたときに重要な要素になります。